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偽りの悪旗~地球(テラ)再調査編~序章 深海に潜む異邦の巨艦  作者: 新景正虎


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第4話 一時の浮上

「艦首上げ」


姿勢制御バラスト調整開始」


「機関出力上昇」


「了解」


「前部探照灯、正常稼働中」


「機雷、音声放射まで後、3、2、1」


 指令室に飛び交う報告と指示。


 やがて海中に放出された球状の金属の塊から、賑やかな音楽が放たれ、海中が騒音で満たされる。


「前方から異常音!」


 いきなりの事態にミシシッピの司令塔はパニックになる。


「何だこれは!」


 突然の事態にソナー手は思わずレシーバーを放り投げ、耳を押さえる。


「波形乱れています!周囲の状況不明!」


「くそぅ!後退だ、機関出力上げろ!」


 司令塔内に響き渡る音楽に耳を押さえながら艦長が指示を下す。


「後進します!」


 ウォータージェットが回転を始め、ミシシッピは警戒しながら後退する。


 一方、再びキスラ・イプニル


 深海に音楽が流れるなか、キスラは変音域から浮上する。


「囮艦収容開始」


「艦首下げ」


 深海に賑やかな音楽が鳴り響くなか、長いワイヤーで繋がれていた囮艦が艦首を海溝に向けてキスラの艦底へと引き寄せられて収容され、固定される。


「囮艦収容完了」


「艦首下げ、潜航」


 収容を終えたキスラ・イプニルは再び変音域へと潜り始める。


「 速度、現在35ノット」


「深度、300…350…400…」


「索敵、水測、周囲の状況確認怠るな」


「深度、700…750…800!」


「姿勢戻せ」


「了解」


「艦水平へ」


「機関停止、状況確認せよ」


「ソナーブイ放出」


 放出されたブイは変音域の上へと浮かび、周囲の音を拾う。


 ややあって、


「推進機音確認、反応2つ。別方向に離れます」


「周囲に他の推進基音なし」


「かわしたか」


 報告を受けたノルゴル参謀長は安堵の表情を見せる。


「予定時間まで待機、その後会合点に向かいます」


 艦長の言葉にユリウスはうなずくと、ゆっくりとキスラ・イプニルはその巨体を動かし、カムチャツカ海溝の深奥に潜む。


 一方、ミシシッピの司令塔。


 そこは静寂を取り戻していた。


 不明音源の失探と、騒音が収まった後に探知したロシア艦が遠ざかっている事の報告をソナー手から受けた艦長は深く息を吐く。


「艦長、今のは…」


「なるほどな、一筋縄ではいかん……ということか」


 副長の言葉に答えることなく、悔しさをにじませながら艦長は苦々しくうめく。


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