人と魔族は、ワカリアッテイタ
女を貫いた。
背中に抜けた手は真っ赤に染まり、背骨の一部が飛んで行くのが見えた。
魔族屈指の強者である、私の拳の幅の分だけ、だるま落としのように飛んだのだろう。
当然、肺や心臓が傷つき、背骨を破壊しているのだから、当然、言葉など発することなく、当然、脳内の酸素が無くなるのに合わせて死ぬ。
「だから、滅ぼすよ…人類を…」
これが、私にとって、女に告げた最後の言葉で、女にとって、最初の言葉だった。
まずは、人類がどういうものか、知っておいてもらいたい。
人類とは、能力はあるが能力の無い生き物である。
魔族は、それぞれの得意が違い、知能の高いもの、力の強いもの、様々であるのに対して、人類は、全てが特出することなく平均的で、特出していたとしても、それは人類の中でであり、魔族的には、よくいるレベルか、それより弱い、特出しているとは言えない。
そして、常に繁殖期間であり、増殖のスピードが、魔族よりも圧倒的に早い。
魔族には、適齢繁殖期というものがあり、適齢繁殖期にしか生殖が行えない。または行っても意味がない。
故に、魔族は適齢繁殖期のメスにしか欲情しないし、任務を全うし、日々の生活のことを考える。
それに引き換え人類は、繁殖のことばかり考え、ただただ浪費し、無軌道に数を増やし、自然を考え無しに食い散らかし、魔族の生活圏まで奪おうとやってくる。
しかし、その平均した能力、異常な生殖繁殖を活かし、相手の不得意な部分を、集団でつき、数の暴力で押し切ってくる。
まあ単純に言えば、集団性が最も厄介な生き物とも言える。
だが、人類も我々も、同じ世界の住人、知性があるなら、わかりあえるはず。
そう思い、私は和平と、共存共栄の道を模索した。
まだ、ただの若者だった私は、己の信念を強く信じ、ひたすらにまい進した。
多くの尊敬するべき魔族や人類に会い。
私と言う存在の価値観は、日々高まっていった。
そしてある日、気づいた。
「わかりあえるわけ無いでしょう!」
この女の台詞で気づいた。
ずっと昔から、人類と魔族はワカリアッテイタ……
小賢しい考えなどなくても…
人類と魔族はワカリアッテイタ…
私は、それに気づた故に、、、
殺した。
女…いや、人類のメスを…
そして、理解した私は、人類を滅ぼすべく行動を始めた。
これから書かれる戯言は、私の世界では、英雄譚として語り継がれているらしい。
そして、自身のやったことの報いとして…
魔族の王、希望の炎クリムゾン・シュナイダー、人類の敵、灼眼の悪魔ブラッディ・クリムゾンが、その戯言の語りべとなろう。