第十三夜「祈る意味」
アルーンと決別したロベスの目は、深い闇と苦悩に覆われ、バードもまた、実現しつつある『作戦』に対する期待と不安でいっぱいだった。
アルーンとの決別後、ガンディラの一員として本格的に活動を始めたロベスとバードの、ある日の夜の出来事だった。
「なあロベス… お前、そんなところで何やってんだ?」
木の枝で作った簡易的な墓の前に立ち、祈りを捧げるロベスを懐疑的な目で見るバード。
「彼を弔っているんだ…」
ロベスとバードの『作戦』のために犠牲になった、ヒトラルタとガンディラの縄張りの境界線付近に住む住人に祈りを捧げるロベスの行動が理解できなかったバードは、純粋な疑問をぶつける。
「何だよそれ?『弔い』?弔ったら死者が生き返るのか?弔いなんて無意味だろ…?」
ロベスは少しだけ切ない表情をしたが、すぐに切り替えて言葉を返す。
「確かに、死者を弔うこと自体には何の意味も価値もないのかもしれない… だけど… だからこそ、俺たちが弔わないといけないんじゃないか…?」
ロベスの意外な返答にバードは戸惑い、言葉を失った。
「──過ぎ去っていった時間や、去り行く人々を想い出して祈りを捧げることで、それらは永遠になるんだ… これは単なる生者のエゴに過ぎないかもしれない… だけど、そのくらいの我儘、神は許してくれるんじゃないか…?」
ロベスの考えに感動したバードは、面食らったようにこうつぶやいた。
「──そうだな… そうだといいな…」
そして、バードも自分たちのエゴで犠牲になった故人に、祈りを捧げた。
「脱獄」、「復讐」、「作戦」
目的の数だけ犠牲は出る。それでも、彼らは進み続けなければならない。たとえそれが世界の運命に抗うことになろうとも、決して歩みを止めてはならないのだ。
続く…




