第十夜 「邂逅」
ロベスとバードはガンディラに所属している男の案内の元、ボスのいる一本の巨大な気が生えた丘へ向かった。丘に立つ男は細身で、丸い眼鏡をかけていて、灰色の髪の毛を後ろで結っていた。男はまるでロベスとバードがここへ来ることを知っていたかのように、じっと丘からロベス達を見つめていた。雲から日光が差し込むその様は、まるで神がこの運命の出会いを祝福しているかのようだった。
「ダイアさん…?」
じっとロベス達を見つめて動かないボスを見て、男は心配の声をかける。
「…!すまない… ごめんよハート… 彼らをここまで案内してくれてありがとう…」
「い、いえ…!そんな滅相もない…!当然のことをしたまでですよ…!」
ダイアの言葉を聞いてハートが恥ずかしそうに頭をかいた。
「それでは… 私はここで…」
そういってハートがそそくさと帰っていった。
「先ほどはすみません… どこか懐かしい気配がしたもので…」
ダイアが申し訳なさそうな笑顔で謝る。しかし、ロベスはその言葉を深く考えた。
「もしかして… 貴方は『あの日』のことについて何か知っているのですか?」
ロベスの脳内で、ルイス城での苦い記憶が過る。
「いえ… 私は何も… ──しかし、この獄中生活で聞いたことがあるのです… ここには、この世界の運命に抗う『永遠の炎』が眠っていると…」
突如、不思議な風が吹き、丘に生えている大樹がざわめきだす。ロベスの心拍数が上がり、眩暈と頭痛がロベスを襲う。
(クソッ…!まただ…!)
ロベスの脳内には、身に覚えのない記憶が。
角の生えた鬼のような見た目をした少女との不思議な出会い、サイボーグのような見た目をした男との雨の降る町の中で交わした約束。──ロベスの頭の中は膨大な量の記憶で溢れかえっていた。
脳の限界を超えたロベスは、その場で倒れる。
目が覚めると傍にはダイアが。
「──よかった… 心配しましたよ… しばらくそこで待っていてください… バード君を呼んできます…!」
そう言ってダイアが病室から勢いよく飛び出す。
カーテンがそよ風でなびき、白い光が部屋を照らす。あたりはすっかり昼になっていた。
(一体俺に何が起きたんだ…?わからない…?俺はどうしてここで眠っているんだ…? ──ジャンヌ… 教えてくれ… お前は何処へ消えていったんだ… またあの日のように笑って言ってくれよ…『あなたならできる』って…!」
ずっと傍にいたはずの存在がここに居ないことを知ったロベスの目は完全に混乱していた。
続く




