第八夜「孤立無援」
ロベスとバードはヒトラルタの面接を受けるため西側にある大聖堂を訪れたが、そこで組織の裏切りに会う。バードの持つ能力「略奪」は相手を殺すことで能力を奪うというもの。つまり、奪った分だけ因縁があるのだ。ロベスが体を岩石のように変化させたのも能力によるもので、元の持ち主から奪ったものだった。
そしてその男は最悪なことに、刑務所内最大派閥のマフィア「ヒトラルタ」に所属していたのだ。
ロベスとバードは孤立無援の中、さらに窮地に立たされることになる。
「ハァ… ハァ… 急げバード…!ここは奴らの縄張りだ…!急いで脱出しないと追手が来る…!」
ロベスはスラム街のような地区を、全力で走りながらバードにそう言った。2人の男が全力で路地を走っている珍しい光景を、浮浪者のような見た目をした人々が見ている。
「わかってるよ…!クソッ!!ハメられた…!!あいつら、俺たちが岩石野郎を殺したことを知ってたんだ…!あいつらに目をつけられたままじゃ脱獄何て不可能だ…!!チクショウ…!!」
バードが全力で走りながら後悔する。そんなバードを見て、ロベスはバードに打開策を提案する。
「諦めるな…!!この監獄ではたくさんの組織が複雑に絡み合っている…!!決して四面楚歌ってわけじゃない…!今は余計な事を考えずに、生き延びることだけ考えろ…!ガンディラの所まで行けば奴らもそう簡単には入ってこれない…!!飛ばすぞ!!」
ロベスはそう言ってさらにスピードを上げる。
この刑務所には、西側を支配している、実力至上主義で武闘派ぞろいのマキャベリスト集団「ヒトラルタ」と、絶対王「ルイス・ヴィエゴ」に反乱したことで投獄された人々が集まり結成した革命軍で、非暴力不服従をモットーに掲げ、刑務所内の中央に多く存在している「ガンディラ」と、この刑務所内の物流と経済を東から支配しているインテリ系マフィア「ポルポーネ」という3つのマフィアがにらみを利かせていて、それぞれ絶妙なバランスで保たれている。
一見するとポルポーネとヒトラルタの2強に思われるが、間に中立であるガンディラが入ることによって両者の抗争を防いでいるので、ヒトラルタがガンディラに抗争を仕掛けることはなく、ポルポーネもまた、「利益」のみを追求するマフィアなので、無駄な争いごとはせず、ガンディラでも商売をしている。
つまり、ガンディラが支配する中央地帯まで逃げきれれば、しばらくの間は時間が稼げるのだ。
「見えた…! 中央地帯まであとちょっとだ…!走れ!!」
ロベスとバードは何とかガンディラが統治する中央地帯まで逃げ切ることができた。
「ハァ… ハァ… クソッ…! マジで疲れた…!!」
バードが地面にしゃがみこむ。それを見たロベスも地面に仰向けになる。
「ああ… そうだな…」
「あのぉ… 大丈夫ですか…?」
放心状態の二人に、謎の男が声をかける。
続く




