第六夜 「天国地獄はさかさま」
「なあ、さっきから難しい顔して一体どうしたんだ?」
畑での刑務作業を終え、いつもの食堂で夕飯を食べているロベスとバードは、昼に会ったマフィアたちのことを思い出す。
「いや、今日あったマフィアの連中、西側の大聖堂に来いって言ってただろ…?」
「そういや言ってたなそんなこと… でもそれがどうしたんだ?」
バードはのんきにパンをほおばりながら会話を続ける。
「西側って言ったら、ヒトラルタの縄張りだろ…?厄介ごとに巻き込まれないといいんだが…」
「…ヒトラルタってそんなにヤバい組織なのか?」
バードが少し心配そうな顔をする。
「ああ、あいつらは生粋のマキャベリスト集団だからな… 油断してると一瞬で搾取されて終わるぞ…」
「…マジか 俺、あいつらに能力のこと言わない方が良かったかな…?」
バードが自分の行動を反省して下を向く。
「今更もう遅い… それに、あいつらは俺達が『使える』能力者だと思ったから承諾したんだろう… ここから脱獄するためには仕方のないことだった… あまり気にするな…」
ロベスの言葉で少し胸が軽くなったバードは、ある提案をする。
「──ありがとう… ちょっと気が晴れたよ… ところでさ、ロベス。俺ちょっと『いいこと』思いついたんだけど、これってどうかな?」
そう言ってバードが不敵な笑みを浮かべる。
「──ッ!お前!?本気で言ってんのか!?」
ロベスが思わず声を大声を出す。
「まぁまぁ… 落ち着けって… うまくいけばここから脱獄するどころか、この監獄ごとひっくり返せるかもしれないぜ?」
バードはにやりと笑う。
賑わう夜の食堂に、生暖かい不思議な風が吹く。空には数えきれないほどの星が輝いている。




