第五夜「交渉」
ロベスとバードは今日も刑務作業に明け暮れていた。
「ハァ…!ハァ…!やっぱりおかしいだろ…!どう見ても人間に耕せる広さじゃねぇ…!畑を耕す魔法とかねぇのか…!?」
「ハァ… ハァ… あったら使ってるだろ… あとちょっとで休憩だ…! それまで頑張れ…!」
休憩時間に水を飲みながら、ロベスとバードは少し離れたところで何かの話をしているボルサリーノハットを被った男たちを眺めて愚痴をこぼす。
「クソ…!あいつら、俺たちのこと見向きもしねぇ…!もう我慢ならねぇ…!!俺は行くぞロベス!!あいつらに直談判するんだ!!!」
「お、おい… 待てよ!」
バードはそう言って勢いよく立ち上がった。そんなバードを止めようとするが、ロベスは諦めてついていくことに。
マフィアの男たちは自分たちに近づいてくる2人に気が付き、声をかける。
「止まれ!お前たち、何の用だ!!」
「俺をマフィアに入れてくれ!!」
バードが大声で言った。
それを聞いたマフィアの男たちは2人に近づいてこう言った。
「駄目だ 得体のしれない者を組織に入れるわけにはいかん。わかったら大人しく作業に戻れ」
男たちが断ることを知っていたロベスはやれやれといった顔をする。
(ハァ… まあそうなるだろうな…)
しかしバードは退かなかった。
「俺は『能力者』だ!俺とコイツの力は必ずアンタたちの役に立つ!だから頼む!!アンタたちにとっても悪い話じゃないはずだ…!!」
(あ…あのバカ!何で能力のことまで話すんだ…!)
能力者と言う言葉を聞いたマフィアの男たちは態度を一変させる。
「何…!能力者だと…? それは本当だろうな…!?」
「ああ、本当だ… 俺は「略奪」の力を持つ能力者。相手の能力を奪い、「器」であるコイツに付与することができる。そういってバードはロベスを指さす。
「ああ、ホントだよ… ほら…」
そう言ってロベスは腕を岩のようにして見せる。
(クソッ!悪目立ちはしたくなかったのに…!)
「…!」
それを見たマフィアの男たちの顔が一気に険しくなる。
(まずい… さすがに地味過ぎたか…?)
ロベスはマフィアの男たちの反応に杞憂するが、意外にも男たちは要求を承諾してくれた。
「──いいだろう。俺たちの組織に歓迎する」
「まじか!」
声を上げて喜ぶバードを遮るように男は言葉を付け加える。
「ただし!『試験』に合格すればの話だがな…」
「試験?」
ロベスが質問する。
「そうだ… 俺たちの組織は秘密厳守で実力至上主義。お前たちにその適性があるか、組織の人間が複合的に判断する」
(試験か… まあ、ただで入れるわけないよな…)
「いいだろう、乗った」
ロベスが前向きにそう言った。
「そうか… 明日の14時、西側の大聖堂に来い… 遅れるなよ…」
マフィアの男たちがそう言って去っていった。
(西側の大聖堂…!?もしかして、あいつらヒトラルタの連中だったのか…!?)
「どうしたロベス?浮かない顔して… ようやくマフィアになれるんだ…!もっと喜べよ?」
暗い顔をしているロベスを心配して、バードが声をかける。
「まずいぞバード… 俺たちは、もしかしたらとんでもないことに巻き込まれたかもしれない…」
ロベスは冷や汗をかきながらそう言った。
続く




