第四夜「目指せマフィア」
ロベスとバードは脱獄に協力してくれる仲間を探すため、マフィアに入り情報を集めることを決意する。
そのためにはまず、マフィアの構成員たちに認知してもらうために積極的に刑務作業をする必要があった。
ヤマトとロベスは必死に刑務所内にある畑を耕す。日光が痛いくらい眩しい快晴の空の下で、汗水を垂らしながら必死に鍬を振り下ろす男が二人。
「クソッ…!何で俺がこんな事しなくちゃいけねーんだよ…!」
「仕方ないさ…! こうしていろんな奴らに俺たちのことを知ってもらってマフィアと繋がりを持つんだ…!それまで耐えろバード…!!」
「ハァ…!ハァ…!チクショー…!!何であいつらはサボれて、俺たちは働かされてるんだ…!?」
バードは、帽子をかぶり木陰の下に立って何かを話している男たちを指さす。
「多分あいつらはマフィアだ… こうして俺たちがちゃんとサボってないで働いてるか監視してるんだ…」
「じゃああいつらに直接話しかけた方が手っ取り早いんじゃねーの…?」
「いや、マフィアは組織に忠誠を誓える奴じゃないと入れない… 刑務作業すらまともにこなせないやつにマフィアの仕事は務まらないさ…」
「クッソォォ!!いつまでやりゃいいんだよこれ!!もう腕がパンパンだよ!!」
「俺たちが模範的に過ごしていたらそのうち話しかけてくる…!今はただ耐えろ…!」
「──あぁもうわかったよ!!」
ロベスの言葉を聞き入れたバードは、日が暮れるまで広大な畑を耕し続けた。
その日の夜、食堂で食事中、バードが愚痴をこぼす。
「なあロベス!!!俺もう我慢できねぇよ!!!一日中死ぬ気で働いて、貰えたのはたったの1000ゼニーだぜ!?こんなはした金じゃ、メシを買うのがやっとだ!!俺は酒が飲みたい!!女も抱きたい!!こんな生活もう限界だ!!!早く脱獄して自由になろう!!」
「お前… 脱獄する目的変わってねーか…? あと、普通に考えて俺達囚人に大金持たせるわけねぇだろ… むしろ1000ゼニーもくれることに驚きだよ…」
ロベスは欲だらけのバードにあきれるが、バードの不満はまだ収まらなかった。
「だとしても!せめてもっとマシな方法で金を稼ぎたい!!今の生活を続けるくらいなら、マフィアとして死んだほうがマシだ!!」
「お前…」
「決めた…!俺、明日マフィアの連中に話しかけられなかったら直談判する!俺たちの能力はきっと組織にとって役に立つはずだ…!俺はやるぞ…!止めても無駄だからな…!」
「…好きにしろ」
ロベスも内心、過酷な労働環境にはうんざりしていた。しかし、地道だが確実な方法である「勤労さのアピール」ができないとなれば、残された道はバードの言うような、「自身の売り込み」しかなくなる。
ロベスはその日の夜、どうするのが最適か考えた。
(どうしたもんかな… バードは完全にやる気だし… あいつがやるなら当然俺も一緒に動かないといけないよな…?)
(けど、正直どうなるか全く分からない… もし失敗したら、ほかの組織に行くしかないのか…?けど、いろんなところに雇ってくれって言ってたら、スパイを疑われてもおかしくないよな…? できることなら最も規模の大きい組織に一発目で入りたい…)
(実際のところ、あいつらはどこに所属してるんだ…?アルーンに聞いても、さすがに下っ端までは知らないって言ってたし…)
(まあいい… 明日のことは、明日考えよう… ──今日はもう寝るか… 早いとこ、ここから脱獄しないとな… )




