最終話 キミと出逢えた奇跡
漫画として週刊誌で連載したいので、作画担当をしてくださる方を募集中です。
二人は走った。どこか遠くで、二人だけの平穏な暮らしをするために。
ただひたすらに走った。銃弾や弓が飛び交う戦場や、思わず足を踏み外してしまいそうな過酷な自然を。
時には殺し、時には奪いながら、ヤマトとジャンヌは、生きるために必死に走った。
しかし、鬼も人間も頼ることのできない2人は、徐々に窮地に追いつめられる。
「クソッ…!ここを通れば戦場から離れられるのに…!」
「ヤマト…!」
(どうする…!?殺すか…!?俺一人で…!?無理だ…!さすがにこの数相手じゃ勝ち目がない…!)
ヤマトとジャンヌは守り人の駐屯地のすぐ近くまで来ていた。この先の道を抜けると山があり、その山で夜を過ごそうと考えてた2人は、窮地に陥る。
「ヤマト…!引き返そう…!ここは人の出入りが激しい…!このままだといずれ、ほかの鬼に見つかるわ…!」
ジャンヌが冷静に判断するが、ヤマトはそうではなかった。あと一歩のところで戦場から逃れられるこの状況を、なんとか打開したいと考えるヤマトは、無謀な作戦に出ようとする。
「ジャンヌ…!俺が囮になるからその間に一人で先に行ってくれ…!すぐに追いつくから…!」
しかし、ジャンヌは涙を浮かべながらヤマトの頬を叩く。
「バカ!なんでそんなこと言うの?約束したでしょ…!?自分を犠牲にしないって!」
「でも…!」
ヤマトはジャンヌの涙に動揺するが、なかなか引き下がらなかった。しかし、誰かを失う悲しみを知っているヤマトはジャンヌに自分の軽率な発言を謝罪する。
「──ごめん」
「二人で、幸せになろう…」
ジャンヌがヤマトの手を取ってそう言った。
そしてジャンヌがいた洞窟まで引き返す2人だったが、道中、誰かがいた痕跡をヤマトが発見する。最大限警戒しながら洞窟まで戻ろうとする二人だったが、ヤマトが気配を感じ取る。
「──ジャンヌ! 誰かいる!そこでじっとしててくれ…! すぐに戻る…!」
「わかった…!」
ヤマトがあたりを警戒していると、鬼が奇襲を仕掛けてきた。
鬼の不意打ちをくらい、よろめくヤマトだったがとっさの反応で何とか急所は避けられた。
しかし、手痛い一撃を喰らったヤマトは、少し冷や汗をかく。
(まずい…!敵は1人みたいだが、この傷じゃ増援を呼ばれたらさすがに厳しい… 早いとこ殺さねーと…!)
鬼がヤマトに追撃を入れるが、今度は剣で完璧に防ぎ、カウンターを入れるヤマト。なんとか増援を呼ばれる前に鬼を殺せたが、鬼にもらった傷はかなり響いた。
(だめだ…!血が止まらねぇ…!次誰かに会ったらかなりまずいな…!)
ジャンヌの所へ戻ったヤマトの傷を見て、ジャンヌが心配する。
「ヤマト!大丈夫なの!?待ってて…!今止血するから…!」
「すまねぇ…!油断した…!」
ヤマトはジャンヌに止血をしてもらい、また2人で洞窟を目指した。
しかし、止血をしてもらった傷口から、また血が溢れ出す。しかし、ヤマトはジャンヌに心配を賭けたくなかったため、そのことを言わなかった。
(クソッ…!また血が出てきやがった…!頭も痛てぇし… 思ってたよりヤバいか?これ…)
それから少しした後、複数人の話し声が聞こえてきた。
ヤマトとジャンヌはとっさに木の陰に隠れるが、声はどんどん近づいてきた。
「ジャンヌ!こっちへ!」
「ヤマト…!?その傷…!なんでもっと早く言わなかったの!?」
ジャンヌがヤマトの傷が悪化していることに気が付いたが、すでに手遅れだった。
「ハァ… ハァ… 無駄だ… 自分でわかるんだ… 傷は深い…」
「そんな…!急いで洞窟で手当てしないと…!」
「ハァ… ハァ… まずはあいつらだろ… このままだと二人ともまずい…!」
声の主は、守護警察の部隊だった。しかし、もうヤマトには戦えるほどの気力がなかった。
そんな絶体絶命の時、窮地に立たされたジャンヌが、思いもよらぬ提案をする。
「ヤマト…! あのね… よく聞いて欲しいの… 私、自分でも何を言ってるのかわからないんだけれど、それでも、貴方と一緒に居たいから、聞いて欲しいの…!」
「私が囮になって彼らを巻いて、洞窟から薬を取ってくるから、それまで耐えて欲しいの…!」
ジャンヌの無謀な提案に、ヤマトは全力で反対する。
「ダ、ダメだ…!危険すぎる…!」
「大丈夫…!私、これでもおてんば娘だったから、この山のことは誰よりも詳しいの… だからお願い…! 少しの間だけ、耐えて欲しいの…!」
「ジャンヌ…!無茶だ…!」
「だめだ行かないでくれ… 俺を一人にしないでくれ…! お前の傍に居たいんだ…!」
それでも反対するヤマトだったが、ジャンヌが強引に発とうとする。
「お願い…聞いて…ヤマト」
ジャンヌがヤマトの顔を両手でつかみ、無理やり目を合わせる。
「貴方と過ごした時間は短かったけれど、私が貴方へ捧げる愛は永遠よ… だから…」
「もし… もう一度私が一度貴方と出逢えたのなら、今度は、私を貴方のものにしてくれますか…? 」
「──当たり前だッ…!!!」
「愛しているわ… ヤマト…」
そう言ってジャンヌはヤマトの元を去り、囮になった。
ヤマトはジャンヌの後を追おうとしたが、もう立ち上がることができないほどに消耗していた。
自分の無力さを知ったヤマトは、絶望し泣き叫ぶ。
一応最終話ですが、第二世界編として続くのでそちらの方もぜひご期待ください。




