ETERNAL FLAME another story 第1話「扉」
日常は一瞬にして消え去った。
ある日突然、まるで神の逆鱗に触れたかのような異常気象が鬼の世界を襲った。
それはしばらくの間続き、たくさんの命や作物、建物を奪い去っていった。
それを受けて、神を信じ、礼節を重んじる種族である鬼は神に祈った。
「おお…! 神よ…! どうか我らをお救いください… 我々は、日常を取り戻すためならどんな試練にだって立ち向かいます…! どうか…」
その思いが届いたのだろうか、翌朝、ある一匹の鬼の少女が不思議な「扉」を発見する。
その扉は木でできていて、腐食が激しく苔が生えていたが、なぜか荘厳さがあった。
そして、少女が扉を開けようとするが、なぜか扉は開かなかった。
村の男に扉を開けるのを手伝ってもらったが、それでも扉はぴくりともしなかった。
少女は扉のことを村長に伝えると、先日の祈りが功を制したのだと言われた。
扉を開けるには、試練を受け入れなければならないと言う村長は、村中の男を扉の前に集めてこう語った。
「皆の者… 話がある… 皆も知っての通り、もうこの地には長くは住めない… そこで、儂は先日、神に祈りをささげたのじゃ… そして翌日、この扉が現れた… 寛大なる神が、我らに救いの道を示してくださったのじゃ…」
「おお!これで私たちは救われるのですね!!」
村の若者が喜びをあらわにしたが、村長がそれを咎める。
「待て… 話はまだ終わっておらん… 問題は、その代償じゃ…」
村長が罪悪感を感じながらそう語る。
「代償…」
それを聞いた村人たちの間に一気に緊張が走る。
「おそらく、扉の向こうは新たな居住地じゃ… しかし、その土地には先住民がおるかもしれんし、今よりももっと過酷な環境かもしれん… 儂らの日常を取り戻すには、膨大な時間と犠牲、そしてなにより、それらを受け入れる『覚悟』が必要なのじゃ…」
「村長…! 俺は日常を取り戻すためならなんだってやります!」
村の若者は威勢よくそう言った。
「ありがとう… お前のような者がいてくれて儂は心強いよ… しかし、開拓のためには膨大な人数がいるのじゃ… 覚悟を決めたものは、儂のところへ来てくれ…
明日の日が暮れるまで、開拓者を募集するから一度よく考えてみて欲しい…」
その日の夜、話を聞いた男たちは家族や友人、恋人にそのことを伝えた。反対するものや、快く送り出してくれた者、反応は様々だったが、翌日、村長のもとに集まった鬼は先日とさほど変わらなかった。
皆、覚悟を決めたのだ。そんな彼らに、村長が感謝の言葉を述べる。
「皆の者… よく来てくれた… ここに来るまでに様々な思いや迷い、葛藤があったとおもうが、本当によく来てくれた… そなたらは間違いなくこの村の英雄じゃ… この開拓がどれほどの時間と、犠牲を有するかは儂にもわからぬ… それでも… それでもそなたらのような勇敢なものが存在し続ける限り、我らは永遠じゃ…!本当にありがとう…!」
そう言って心からの感謝を述べた村長は、扉に触れる。すると、扉がまばゆい光を放ち、開かずの扉が開かれた。村長の後に続く鬼の集団。
彼らがこの世界に帰ってくることは二度とないが、それでも彼らは戦い続ける。失った日常を取り戻すために…




