第10話 「屍の先に待つもの」 (修正済み)
漫画として週刊誌で連載したいので、作画担当をしてくださる方を募集中です。
【10:25 Floor3 天内ツカサ視点】
3階は他の階とは比べ物にならないほど緊迫していた。喋る鬼を捕虜にすることができたからだ。
遡る事十数分前……
【10:15 Floor3 天内ツカサ視点】
「気をつけろ……かなり近いぞ……」
強い鬼の気配を感じたツカサは、従者に警告する。
「ハッ……!!」
従者たちが抜刀の準備をする。
「止まれ」
ツカサが手を横に広げて「止まれ」のサインをする。
何かを察した従者たちが一斉に抜刀し、一気に緊張が走る。
「ツカサ様……!」
従者が前に出ようとするが、ツカサがそれを止める。
「大丈夫だ……俺がやる」
「つまらない小細工は無しだ……正々堂々勝負しよう」
ツカサが誰も居ない空間に話しかけると、隠れていた人型の鬼が現れた。
その鬼は、ほかの鬼と違い目と口の縫合が千切れていた。
その異質な見た目だけでほかの鬼とは別格の強さを有していることが伝わってきた。
「口の縫合がないな……?お前、言葉を話せるだろ?」
ツカサのその質問に、従者たちが動揺する。
「なっ……何を……!」
「まあ見ていろ……」
ツカサが動揺した従者達に言い聞かせる。
「如何にも……お前が天内ツカサだな……?」
鬼が恐ろしく低い声でそう言った。
「ありえない……」
従者は完全に打ちひしがれていた。
「だったらどうする……?」
ツカサが鬼を挑発する。
「我々は──貴様らを殲滅するのみ」
次の瞬間、鬼がツカサに襲い掛かる。
鬼の鋭い爪の突きを紙一重で交わしたツカサの顔から血が流れ落ちる。
「ほう、今のを躱すとは驚いた……」
鬼がツカサの反射神経に感心してそう言った。
「次はよけきるさ……」
ツカサの自信にまみれたセリフに、鬼が反論する。
「貴様に次はない」
「抜かせ……」
ツカサがそう言い終えた直後、両者ともに動き出し、鬼の鋭い爪と、ツカサのレイピアが激しくぶつかり合う。
目まぐるしく動き回る2人だったが、ツカサの方が一枚上手だった。
血を流して跪く鬼の前に立ったツカサは、鬼を拷問して情報を引き出そうとする。
【10:25 Floor3 天内ツカサ視点】
知性のある鬼を拷問すれば何か有益な情報が得られると思ったツカサは、鬼を拷問して情報を吐かせようとする。
「なあ教えてくれよ……お前らは一体何者で、一体『何処』から来たんだ?」
そういってツカサは鬼の足の甲を剣で突き刺す。
「グォォォォ!!」鬼が鈍い叫び声を出す。
そして歪んだ声でこう言った。
「い” え” な” い”」
予想と違う答えにイラついたツカサは、さらに左足の甲も剣で突き刺す。
「グワァァァァ!!」鬼がさらに鈍い叫び声を出す。
「ご ろ“ ぜ」
鬼の口が固く、これ以上の拷問に意味がないとわかったツカサは、最後にダメもとでハッタリをかましてみる。
「もういい……お前の脳に直接聞くことにする」
そういってツカサは自身のヘルメットを鬼に装着させると、鬼が焦って口をわる。
「ま“ て“ 悪かった……『扉』だ……我々の世界と、貴様らの世界を繋ぐ扉が鶴橋にある…… 我々はそこから来たんだ……私の村には家族がいる…… 頼む…… 家族だけは殺さないでくれ……」
「『待て』?今お前は俺に待てと言ったのか?お前はそうやって命乞いしてきた人間を一体何人殺したんだ?」
ツカサの声に怒りがにじみ出る。3階の緊張が最高潮に達した。
「……」
問い詰めるツカサに、鬼は反論できなかった。
そんな鬼に対して、ツカサが吐き捨てるようにこう言った。
「冥土の土産に教えてやるよ化け物野郎 こいつはただのヘルメット、思考を読み取る力なんてどこにもない……」
「貴様ァァ!!」
激昂した鬼がツカサに襲い掛かるが、ツカサがレイピアで冷静にとどめを刺した。
「ハァ……」
全て終わったことに安堵したツカサから、ため息が漏れる。
「ツカサ様……!お怪我はありませんか……!?」
ツカサの従者が心配そうに声をかける。
「問題ない……それより聞いたか?」
「ええ、『扉』が鶴橋にあると……にわかには信じられませんが……」
あまりにも突拍子もない鬼の暴露に、従者は狐に化かされたような顔をしてそう言った。
「俺もだ……ゲンスイには俺から直接伝えておく……お前らはほかの階の援護に回れ」
「はっ!」
従者は急ぎ足でほかの階に向かっていった。3階に一人残されたツカサは、複雑な表情で物思いにふけった。
(『扉』だって……?俺たちは一体…… 何と戦っているんだ……?)
続く




