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魔王と相討って10年。異世界へ死に戻ったら、ヤンデレ美女に成長した義妹の俺への執着がヤバいことになっていた。  作者: 甥の子
死に戻り3日目

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森の攻防②

 狙い澄ました一矢は空を切った。


 攻撃の爆心。

 周囲の木々が吹き飛ばされ、濛々と煙が立ち込めるその場所に標的の姿は既にない。


 その結果を見て、外套を纏い、身の丈ほどの長大な魔弓を携えたその者が感じたのは驚愕ではなく微かな苛立ちだった。


 必中のタイミングで放った一矢を回避されるという屈辱。

 それはその者にとって、久しく忘れていた感覚だった。



「――ちっ、あれを躱してみせるか」


 丘の上で魔弓使いは己の未熟と敵の手強さに舌打ちを漏らす。


 完全な死角。

 完璧な不意打ちだった。


 にもかかわらず、背後から放たれた一撃は物の見事に躱されてしまった。


 狙いが逸れたわけではない。

 標的は矢が中る寸前、こちらの攻撃を察知し、一瞬にも満たない刹那の時間で反射的に魔力を纏い、全身を強化・身体能力を加速。


 それにより直撃を回避してみせたのだ。



「尋常な反応速度ではないな。腐っても『最速』というわけか」


 魔力のキレ――全くの0状態から最大出力に達するまでの異常なスピード。

 その瞬発力の高さこそが『赤』の属性の魔力特性だ。


『赤』を極め、『煌』へと至ったアウローラの魔力は文字通り稲妻と化している。


 正に疾風迅雷。

 速度という一点においてのみ、人魔大戦最大の英雄――『聖王』カイラードさえ上回る世界最速の魔術士。



(……不意打ちでも中てられないとなると、この遠間では何発撃っても無駄か。このまま距離を保たれたら確実に逃げられるな)


 事前に調べたアウローラ=ヴァン=エヴァーフレイムのプロファイリング。


 かつての彼女であれば、恐らく逃走の選択を取るだろう。


 何故なら敵の目的も、動機も、正体も。

 アウローラにとって大きな意味を持たないから。


 瞬殺できる雑魚相手ならともかく、多少でも厄介と感じたならそのままこの場を立ち去る可能性が極めて高い。


 けれど―――



(今のあの女は絶対に逃げない。私に執着する理由はなくとも、敵を排除する必要があの女にはあるから)



 情報によれば、二日程前からアウローラの傍には一人の少年の姿が確認されている。

 しかも、ここ10年の彼女からは考えられないくらい、アウローラはその少年を溺愛していると。


 少年の素性は未だ確定してはいないが、護るべき存在の脅威となるものを今のアウローラは無視できない。


 必ずこちらへ立ち向かってくる。



「――――――」



 魔弓使いは長く、ゆっくりと息を吐いた。


 そして、膨大な緑色魔力が凝縮された矢を魔弓に番える。


 彼我の距離は直線にしておよそ4km弱。

 木々などの障害物や高低差を考慮すれば、実際はその倍はあるだろう。


 いかにアウローラが驚異的な速度で迫ってこようとも、こちらの攻撃を躱しながら無傷で詰めるにはあまりにも遠すぎる。


 アウローラとてそれは理解しているはず。

 少なくとも無策で突っ込んでくることはないはずだが……



「さて、どう来る?」



 強く、魔弓を握った。


 攻撃の手数と速度はあちらが上。

 しかし、どれだけ多くとも速くとも当たらなければ意味はない。


 アウローラが彼女の射程圏内に到達するより先に今度こそその脳天を射抜いてみせる。



 魔弓使いは敵意と殺意を籠め、深緑の双眸を細めた。



 そして次の瞬間。




 森の中から、紅い雷が空に向かって迸った。







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