004 闘技場
しばらく歩いていると、
「そろそろ闘技場が見えてくるよ〜!」
ユキが私の前を歩きながらくるりと体全身でこちらに向き直り、どこか嬉しそうにそう言った。
そしてまもなく、最初の目的地である闘技場が見えてくる。
「なんか…。デカイね…?」
そのまま直進し、見えてきた闘技場はとてつもない大きさだった。闘技場と言うよりは、スタジアムと言われた方がしっくりくるかもしれない。
ここまでくると、いままではあまり見かけなかったプレイヤーが沢山集まっている。周りにはアイテムショップや、装備屋、武器屋といったお店が立ち並んでいた。あ、これ全部プレイヤーのお店なんだね?
さらに闘技場に近付きその闘技場を見上げるくらいの位置に来ると、なぜか周りのプレイヤーの視線を強く感じるようになった。
少し様子を見ていると、ユキのことを見ているような感じだ。ユキ?可愛いから注目集めちゃったとか?
まあ、こういうのは気にしても仕方が無いので、あまり気にしないようにユキの後ろをついていった。少しユキとの距離が近くなったのは気のせいだろう。
*
あれからすぐ、闘技場の中に私たち2人は入った。
中に入ってすぐに現れたのは、受け付けロビーだ。しかし超巨大な、と前に付くのだが…
受け付けロビーだけで、とてつもない広さを誇っているこの闘技場は、ユキに言わせればこれが東西南北の計4箇所あるというのだからプレイヤーの多さと、闘技場の大きさを物語っている。
もちろん人混みもすごいもので、結構人とぶつかりそうになり…。そしてユキの顔を見た瞬間にびっくりした表情と後ずさり、そのままなにか空中をタップしてそこを凝視している。
ねぇ?ユキ。なんかすごくみんながユキ見た途端に…なんというか、恐怖?萎縮?って感じなんだけど。なにか絶対やらかしてるよね?
なに?それこそ過去に大量 殺戮でもしちゃったの?そんな感じだよ?
「さあ!ナユカ!!受け付けで私のバトルの観戦チケットを貰っておいでよ!さっきフレンド登録したから無料で貰えるはずだよ〜」
そんな私の思考も知らぬユキ。未だに上機嫌な笑顔で私に振り返り、そう語ってくれた。むぅー。気になる…
ひとまず、ユキの言っていたチケットを受け取る。ゲーム開始直後、ユキからフレンド申請が届いていた。その時は流れで承認ボタンを押したが、きっとそれのことを言っているに違いない。
そのまま、私は観戦する為に、受け付けボックスのひとつに入りコンソールをつつく。バトル、観戦、賭け金、と表記が浮かび上がった。あ、賭け事なんかもできるんだ?
迷わず観戦を選択する。
色々細かく設定があるのかそれらを打ち込むと。
バトル開始まで… あと8分。
と、表示されている。画面に到達した。そこを押すと詳細な画面が現れた。
ーーーー
ユキ
ランキング:9位
クラス:SSS
勝率:86%
VS
アツキ
ランキング:1 445 295位
ランク:F-
勝率52%
バトル:ランク戦
フィールド:闘技場
時間:昼
天候:なし
ーーーー
ユキと、ユキの対戦相手の名前を見ることができた。
アツキというらしいそのプレイヤーの情報が書いてある。
まだバトルを見ていないのと、ほかのプレイヤーの詳細な情報を知らないから比べようがないが、流石に9位の文字を見ればわかる。
ユキってもしかしなくてもめちゃくちゃ強いんじゃね??
このゲームのプレイヤー人口を知らないけど、かなり多いはずだ。相手の1 445 295位って大きい数字かもしれないけど、勝率を見るとこれで中盤のランキングなのかもれしない。
とりあえず今の私が詳細画面なんて見ても無意味なのはわかった。基準がないとわかんないね。
詳細画面の下にある「観戦」のボタンを押す。すると、私の視界がエフェクトと一緒に違ったものに変わった。
そこに広がっていたのは、大勢の観客が集まりまだ誰も居ない戦闘エリアを今か今かと待ちわびる光景 。とても大きなスタジアムだった。
…あれ?
なんか外から見た闘技場よりも大きくない?たぶん外から見た時の4倍ほどはあると思う。
そんな大きなスタジアムで大衆に見られながらバトルするの?な、なんか怖い。ひとまず序盤は闘技場を避けようかな?と思った。




