表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

96/108

聖女の兄の婚姻話

かなり久々の更新になりましたが、よろしくお願いいたします……!


(というか、お兄様は本当にどうしてそこまで……)


 お兄様のお話を聞き、訊かれたことに答えながら私は呆然とそんなことを思ってしまう。お兄様だって、婚姻の大切さは分かっていらっしゃるはずだろうし、元々の性格が私情よりも利益を優先されるお方。以前の縁談を嫌がられていた理由は、その相手の本当の狙い……つまりはシュトラス公爵家の乗っ取りに気が付いたから。まぁ、もしかしたら今回も前回と同じような事情なのかもしれないけれど。


「……ジェレミー殿下についての情報は、俺も集めている。だが、上手く情報を集めることが出来ていない。……やはり、さすがは相当な頭脳と魔法の腕の持ち主だな」


 お兄様はそうおっしゃって、私の目をまっすぐに見つめてこられる。その目にはなんだか、どうしようもない感情が映っているようだった。……ジェレミー様の狙いは私……というか、アナスタシアだった。それはつまり、今一番ジェレミー様に近いのは私と言うこと。……聖女候補襲撃事件が、ジェレミー様と無関係だとは思えないし、ねぇ。


「承知しております。私は、勝手に突っ走ったりは致しません」


 目を伏せて私がそう答えれば、お兄様は「どうだかな」とおしゃる。……確かに、私には勝手に突っ走った前科がある。というか、それに関しては前科しかない。だから、お兄様に信頼されないのも承知の上だ。でも、少しくらい信頼してくださってもいいじゃない。まぁ、それは無理な話か。


「とにかく、俺の方でも一旦情報収集を強化しよう。……聖女候補襲撃事件のことも、ジェレミー殿下のことも」

「よろしく、お願いいたします」


 私がそう言ってぺこりと頭を下げれば、お兄様は「……ところで、少し愚痴のようなものを言いたいのだが……」とおっしゃって、私たちをまっすぐに見据える。私、ロイド、ニーナ。そして、ミア。それぞれを見据えた後、お兄様は「……ジェニファー嬢について、どう思う?」と問いかけてこられた。……ジェニファー嬢って、宰相の娘のジェニファー様よね? どう思うって言われても……。


「宰相の娘、と言うこと以外に感想は出てきませんね……」


 私は天井を見上げながらそう答える。ジェニファー様に関しては、本当にそれ以外の感想が出てこない。しかし、どうしてお兄様はそんなことを問いかけてこられるのだろうか? ……まさか、ジェニファー様に気があるとか!? い、いやいや! それは止めた方が良いわよ! だって、あの宰相の娘よ?


「お、お兄様! ジェニファー様に気があるとしても……」

「アナスタシア。お前は、何を寝ぼけたことを言っている」


 私の言葉を聞かれたお兄様は「はぁ」と露骨にため息をつかれた。……何だろうか。今、すごく失礼なことを考えられた気がする。それに私がムッとしていれば、お兄様は「……ジェニファー嬢と婚約してほしいと、宰相から打診があってな」なんて続けられた。……つまり、お兄様はジェニファー様との婚約が嫌でこうなっているということ?


「あの宰相のことは、俺もあまり好いていない。だから、断ろうと思っているのだが……」

「ですが?」

「しつこくてな。とにかく、自分の娘以外に俺に似合う奴はいないだろうとか、言ってきてな。……しつこくてしつこくて、嫌気がさしてきていてな」

「……あ、ははは」


 そりゃあ、シュトラス公爵家に嫁入りすれば、将来は安泰だろうし、王国を裏で牛耳ることも容易くなるかもしれない。だから、宰相とのやろうとしていることは、まぁ認めたくはないけれど正しい。悪事として考えれば、だけれど。


「アナスタシアのことが心配だから、俺はもうしばらく婚約も婚姻もしない。そう言っているんだがな……」

「……さようでございますか」

「だが、アナスタシアはもう俺のことなんて必要なさそうだしな。……俺も、そろそろ真剣に婚姻を考えるべきかと思っている」


 ……そんなお兄様のお言葉に、私の胸がぎゅっと締め付けられる。私は、お兄様のことを必要ないと思ったことは一度もない。だから、そんなことを言ってほしくなかった。


「あ、あの、お兄様――」

「――なんてな」


 私がお兄様に本音を告げようとした時だった。お兄様は少し楽しそうに笑われると、「アナスタシアが、俺のことを必要としない日は一生来ないだろうな」なんておっしゃった。……お兄様、私のことをからかったわね!? 本当に……信じられないっ!


「マテウス様。アナスタシア様をからかうのは、止めてくださいませ」

「ロイドは本当に過保護だな。……俺は、アナスタシアのことを大切にしているのに」

「貴方がおっしゃると、何処となく胡散臭いです」


 いろいろな感情を私が抱いていれば、お兄様とロイドはそんな風に言い争いを始めてしまった。……それを見て、呆然とする私とミア。そして、何処となく楽しそうにニコニコとしているニーナ。……こういうところを見ると、ニーナって結構度胸があるなぁって、思うわよね。


(お兄様のバカー!)


 本当に、お兄様は何なのだ。私のことをからかって遊ばないでほしい。シスコン公爵のくせに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

悪役令嬢離縁表紙イラスト

悪役令嬢離縁表紙


― 新着の感想 ―
[一言] すごく面白かったです‼ 才能の違いにちょっと(いや、かなり?)嫉妬しちゃいました。 どうやったらこんなに面白い作品が書けるんですか? しかも、ブックマーク登録者数や評価ポイントがかなり高くて…
2022/01/12 17:32 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ