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従者クラウスの断罪(4)


 キャンディ・シャイドルはその場で俯き、肩を震わせていた。その様子を、取り巻きたちが不安そうに見つめている。中にはキャンディ・シャイドルに手を伸ばそうとしている人もいたが、あの女はその手を払いのけていた。


「嘘よ!」


 そして、数秒後。俺たちの耳に届いたのは、そんな悲鳴にも近い言葉だった。その声の主は、他でもないあの女。あの女はただ「嘘よ、嘘よ!」と言いながら宰相を睨みつけ、「冗談はよしなさい!」と叫んでいた。


「私が聖女。私が聖女じゃないと――」


 そう言いながら、キャンディ・シャイドルは親の仇とばかりに宰相を睨みつける。周りがその様子に困惑する中、たった一人だけキャンディ・シャイドルに近づいていく人間が、現れる。……ほかでもない、アナスタシア様だ。


「負け惜しみを言ったところで、変わらないわ。今年の聖女はこの私。……来年にでも、また挑戦してみれば? 選ばれるかは、知らないけれどね」


 アナスタシア様はけらけらと笑いながら、そんなことをキャンディ・シャイドルに告げる。確かに、選ばれなかった聖女が次の年の聖女に選ばれることも、ある。本当に少しだけだが。……まぁ、あの女に関してはそれもあり得ないのだが。


「……俺から一つ、いいだろうか?」


 キャンディ・シャイドルの悲鳴が場を支配する中、王太子殿下が軽く手を挙げて宰相に意見をする。さすがの宰相でも王太子殿下の言葉を無下にすることは出来ないためか、「どうぞ」と涼しい顔で王太子殿下の言葉を受け入れていた。


「クラウス」

「はい」


 王太子殿下は、俺のことを側に呼ぶ。なので、俺はジュリエット嬢を同僚の男に任せ、王太子殿下の元に向かう。王太子殿下のお隣にはすでにシュトラス公爵がおり、キャンディ・シャイドルを憎々しいとばかりに睨みつけていた。


「俺から一つ、皆に告げなくてはいけないことがある」


 声高らかにそうおっしゃり、王太子殿下はキャンディ・シャイドルを見据えた。その際に、身体が一瞬震えたのを俺は見逃さない。……大方、嫌なことでも思い出されたのだろう。


「今年の聖女候補……いや、もう落選が確定したキャンディ・シャイドルについての報告だ」


 そうおっしゃった王太子殿下は、シュトラス公爵に目配せされる。そうすれば、シュトラス公爵は打ち合わせ通りに長ったらしい紙を取り出す。


「キャンディ・シャイドル並びに、シャイドル男爵夫妻についてだが……罪状が、出ている」


 王太子殿下のそのお言葉を聞いたからか、貴族たちがざわめく。聖女候補に罪状が出ているなど、国にとってかなりの醜聞だ。今日はキストラー王国の大切な日。そのため、他国の王族方も招待されている。そんな大切な日に断罪を選ぶなんて……と貴族たちは思っているのだろう。実際は、わざとこの日を選んだ。……万が一国外に逃亡されても捕らえることが出来るように。


「シャイドル男爵夫妻は、詐欺まがいの行為を長年行っていた。そして――今年、重罪を犯した」


 誰もが固唾をのんで見守る中、キャンディ・シャイドルだけが青ざめている。一歩、また一歩後ずさる中、後ろにいた兵があの女を床に押し付けた。もう、逃げることは出来ないだろう。


「シャイドル男爵夫妻は――このキストラー王国のを乗っ取るつもりだった。大方、キャンディ・シャイドルを王太子妃に据えようとしたのだろうな」

「う、嘘、嘘よ……」

「それについてはもうすでに男爵夫妻の仲間から証言を得ている。……仲間に、恵まれなかったな」


 シュトラス公爵はそうおっしゃると、キャンディ・シャイドルを見下したような視線で見つめていた。……相当、お怒りのようだ。


「ま、マテウス様……。何故……!」

「何故? おかしなことを言うな。俺の可愛いたった一人の妹、アナスタシアを傷つけようとしていたことを、俺が知らないとでも思っていたのか?」


 キャンディ・シャイドルの縋るような視線を蹴り飛ばし、シュトラス公爵は俺の肩に手を置く。次は、俺だとおっしゃりたいのだろう。


「元ティハニヒ伯爵家のヴィクトール・ティハニヒを唆したのも、お前だろう? そして、俺の婚約者であるジュリエット・シャリエ嬢を傷つけようとした」

「違う!」


 ……あぁ、なんて惨めなのだろうか。俺の言葉を必死に否定するキャンディ・シャイドルはただ壊れたように「違う」「違う」と繰り返している。中には「こんなの、おかしい」という言葉も聞こえた。……だが、俺は許すつもりは全くない。


 長々とした罪状を王太子殿下が読み上げていく中、俺はただひたすらキャンディ・シャイドルを睨みつけていた。もしも、この女に王太子殿下が騙されていたのならば……この国は、壊れてしまったのかもしれないな。何故か、冷静にそんなことも思った。


「クラウス。あとは任せたぞ」

「はい」

 

 耳元でシュトラス公爵のそんな声が、聞こえてくる。だから、俺は静かに頷いて――一歩を、踏み出した。

第二部もぼちぼち準備中です……(n*´ω`*n)

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