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子爵令嬢ジュリエットの初恋(16)


 私の殺害未遂事件から数ヶ月ほど経った頃。


 私とクラウス様の婚約は無事了承され、私たちは両片想いの関係から、婚約者という関係になった。そして、本日。私はクラウス様にギャロウェイ男爵邸に呼び出されていた。なんでも、お話があるということで。


「ジュリエット嬢。明日の、ことなのですが……」

「はい」


 クラウス様のおっしゃりたいことは、それだけで大体わかった。明日、このキストラー王国の今年の聖女が、発表される。クラウス様は王太子殿下の従者なので、どちらが選ばれたかを知っていらっしゃる。あんなことがある前だったら、キャンディ様を応援していたと思う。しかし、今は……アナスタシア様を応援したいと思っている。


「明日、正式に今年の聖女が発表されます。今年の聖女は――アナスタシア・シュトラス様です」


 私の目をまっすぐに見つめ、クラウス様はそうおっしゃる。それに、私はホッと一息をついた。キャンディ様じゃなくて、良かったと。


 確かに、アナスタシア様には苛烈な部分がある。でも、彼女の苛烈さは自信の表れなのだろう。自分自身に絶対的で、圧倒的な自信がある。だから、苛烈になれる。他者を寄せ付けず、孤高でいられる。


「そう、ですか」

「あと、明日の聖女選定の儀には……特別なことを行います」


 俯いてしまう私に、クラウス様は優しく言葉を続けられる。……特別なこと。それは、もしかしてだけれど――。


「キャンディ様のこと、ですか?」


 クラウス様は、ヴィクトール様の事件の後本格的にキャンディ様の悪事について調べ始めたそうだ。もちろん、他の人たちの手も借りて。その筆頭が、王太子殿下。王太子殿下はキャンディ様に付きまとわれ、日々疲弊されていたそう。それから、シュトラス公爵。……バネルヴェルト公爵がどうなのかは、存じ上げない。


「えぇ、そうです。明日、キャンディ・シャイドルの断罪を行います。……あまり面白いものではありませんが、ジュリエット嬢も、来ますか?」

「……私、は」


 その問いかけに、私は言葉を詰まらせてしまう。断罪の場など、普通の感覚だと見ていて楽しいものではない。しかし、貴族からすれば断罪は極上の娯楽である。私はそう言う考え方が出来ないから、貴族に向いていないのだろう。それは、分かる。


「……私は、最後まで、見届けたい……です」


 そして、私が数分後に導き出した答えはこれだった。キャンディ様に出逢わなければ、ヴィクトール様はあのままお優しいヴィクトール様のままだったのだろう。そう思ったら、私はとてもではないけれどキャンディ様を許せそうにない。幼馴染が豹変してしまった原因を、そう簡単に許せという方が無理なのだ。


「そう、ですか。では、明日、一緒に向かいましょう」

「……はい」


 正直、キャンディ様が私に悪意を向けて来たらどうしよう。そう言う気持ちはあるけれど……聖女に選ばれなかった聖女候補の身分はそう高くない。それに、クラウス様のお言葉通りだとすれば、キャンディ様は罪人となるはず。私に手出しなど出来ない……わよ、ね?


「あの場では多数の護衛や警護がやってきます。だから……貴女には、誰一人として手出しをさせない」


 クラウス様は、私の不安を読み取ってか瞳をにっこりと細めて、私に微笑みかけてくださった。その笑みがとてもかっこよくて……私は、露骨に視線を逸らしてしまう。これが、惚れた弱みとかそう言うことなのだろうか。


「ジュリエット嬢。俺は、貴女に出逢えてとても幸せだ。ジュリエット嬢は……どう?」


 さらに、たたみかけるようにそうおっしゃるクラウス様。そう問われても……私が出来る答えなんて、一つしかないじゃない。


「私も、クラウス様が好き……です。出逢えて、幸せ……です」


 初めて、恋をした。初めて、恋愛感情で人を好きになった。その「好き」という気持ちを教えてくださったのは、間違いなくクラウス様。だから、私は――クラウス様が、好き。


「クラウス様。私と……ずっと、一緒に居てください」


 私は、微笑んでクラウス様にそう告げた。そんな私の言葉を聞かれたクラウス様は――「もちろん」と、力強くおっしゃってくださった。


 そして、私たちはどちらともなく微笑み合った。


 明日に臨むために。私たちの最後の戦いが――始まる。

これにてジュリエットの初恋は終わりです(n*´ω`*n)次からはクラウス視点。お話はクライマックスです!

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悪役令嬢離縁表紙


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