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悪役令嬢と乙女な魔術師と苦労人のラスボス


「あっ、アナスタシア様。目が覚めたんですね~」

「えぇ、シルフィアさん。ご心配をおかけしました」

「本当ですよ~」


 それから数十分後。シルフィアさんが魔法陣の残骸を片付け終えたのか、私が横になっている部屋にやってきた。その服は何処か汚れており、かなり片づけが大変だったのは一目瞭然。私が「手伝えなくてごめんなさい」と言えば、シルフィアさんは目の前で手をブンブンと振る。


「いえいえ、こっちはこういうことのプロですから。プロに任せてくださいよ。今回はアナスタシア様のおかげで、助かりましたしね」

「……そう」


 シルフィアさんはそう言ってくれるけれど、私はやっぱり気にしてしまう。私、魔術とかの勉強もした方が良いのだろうか? そう思って鞄に手をかけようとしたら、ロイドに止められた。しかも、笑顔で。……過保護なラスボスね。


「あっ、シルフィアさんもロイドが作ったアップルパイどうですか? ロイド、まだあるのよね?」

「はい、まだございます」


 私はぱんっと手をたたいてそう言う。一人であれだけの魔法陣の残骸を片付けていたのだから、かなりお疲れだろう。疲れたときは甘いものに限るわ。そう思って、私はロイドにシルフィアさんの分のアップルパイを用意するようにと指示を出す。すると、ロイドはてきぱきと動いてくれた。


「そう言えば、シルフィアさんは魔術の類をマックスさんから習ったんですか?」

「はい、基礎知識は本でしたが、応用関連は師匠に習いましたよ~」


 ロイドがアップルパイを準備してくれている間、私はシルフィアさんとお話をしてみることにした。今思えば、私はあまりシルフィアさんと二人きりで会話ということがない。大体いつもニーナがいて、女子会みたいになるから。


「魔術の本って、分かりやすいですか?」

「う~ん、微妙なところですねぇ。ただ、のめりこみやすいとは思いますよ。魔術に興味があったら、どんどん次のことを覚えたくなっちゃうんです。……特に私、幼少期は時間が有り余っていたので……」


 最後の方の言葉は、どこか悲しそうな声だった。……うん、ここは話を逸らした方が良いわね。けど、どんな話題を振ればいい? やっぱり、ここは恋の話とか?


「し、シルフィアさんは、マックスさんのことが恋愛感情で好き……なんですよね?」


 そう思って、私は恐る恐るシルフィアさんに問いかける。うぅ、逆ギレされないと良いのだけれど。私がそんな風に不安に思っていると、シルフィアさんは笑いながら「そうですね~」なんてあっけらかんと教えてくれた。あれ? こういうのって、もっと照れたりするものじゃないの?


「私が師匠に惹かれるのは、当然の原理だったと思うんですよ。実家を勘当された私を拾ってくれて、家まで提供してくれたんですから」

「……家までって?」

「私、昔は師匠と同居してたんですよ」


 ……その情報、初耳すぎて脳が追い付かないわ。そんなことを思ってしまい、私は瞳をぱちぱちと瞬かせる。え? 普通の師弟って同居するの? いや、さすがにそれは……。


「アナスタシア様。さすがに師弟でも同居はしませんよ。シルフィアさんとマックスさんが特殊なんです」


 そんな中、ロイドがアップルパイを持ってこちらに来てくれる。そ、そうよね。いくら師弟でも、普通同居なんてしないわよね。


「まぁ、私師匠に拾われて部屋とか与えられたから、師匠の弟子になることを決めたんで、どちらかと言えば逆ですね。弟子だから同居したんじゃなくて、同居したから弟子になった。それだけです」

「……そうなんですね」

「ところで、ロイドさんはアナスタシア様のことが好きなんですよね? 恋愛感情で?」

「はぁ!?」


 シルフィアさんが、ロイドからアップルパイの載った紙皿を受け取ってフォークを手に持った後。シルフィアさんはなんでもない風に爆弾発言を落とした。……ロイド、猫かぶりが取れてしまっているわよ。爆弾、おそるべし。


「い、いや、そんなわけ……」

「いえいえ、見ていたら分かりますってば。でも、略奪愛になっちゃいますもんね。新しい人を見つけた方が良いと思いますよ?」

「勝手に人の恋路を決めつけないでもらえますか?」

「あっ、今好きだって認めました~」


 アップルパイを口に運びながら、シルフィアさんはロイドをからかっていく。ロイドは、こういう類の話題には弱いのか、しどろもどろになっていた。……ロイド、可哀そうね。まぁ、助けたりはしないのだけれど。


(はっ! これはもしかして、チャンスでは……?)


 そうよ。ロイドの意識がシルフィアさんに向かっている今、これはお仕事をするチャンスだわ。そう思って、私が鞄にまた手を伸ばそうとすれば、ロイドは「アナスタシア様?」と言ってまたその手を阻んできた。ちぇ~、やっぱりロイドには敵わないか。


「……と言いますか、アナスタシア様の周りの男性、結構ハイスペックな方が多くないですかね……?」


 そんな時、ふとシルフィアさんのそんな言葉が聞こえてきた。えぇ、私もシルフィアさんに同意するわ。お兄様にロイドにマックスさん、それからおまけでウィリアム様。……本当に、ヤバいラインナップだ。


「まぁ、お兄様が一番ですけれどね」

「本当にシュトラス公爵が大好きなんですね~」


 そう言ったシルフィアさんが、楽しそうに笑う。


 こうして、私たちはここでしばし穏やかな時間を過ごすことが出来た。……もうじき忍び寄る魔の手には、気が付かないで――……。

総合評価6000超えました(n*´ω`*n)ありがとうございます。また、お話はクライマックスに入ってきました(第一部ですが)。第二部第三部があるので、そこまでクライマックス感はない……ですね。


それから、このお話書いている途中でパソコンが不調になりました。時間のロスをしたため、こんな時間に更新してます(´・ω・`)

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悪役令嬢離縁表紙


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