第四章 ハント~ゲームの勝者~
数時間後、参加者たちが続々と戦果を持って現れた。誇らしげに男たちはキツネたちを並べていく。最多はアッシャーとライアンの五匹であった。そして、最後に私が馬に乗って現れた。
「おや、クラキ殿は何も持っていないようだが?」
「初めての上に、女性一人ですからな。当然ではないですか?」
そんな会話がひそひそと交わされる。私は馬を降り、一匹のキツネを王の前に献上した。
「マヤ殿、これは?」
驚いたグリーン伯爵が私に声をかけた。
「白キツネでございます。見事な毛皮でありましたので、魔犬たちに追い詰めさせた後、傷の無いよう凍結魔法で眠らせてあります。どうぞ、王のご随意に」
王は銀の美しい毛並みの白いキツネを見ると執事に渡した。
「見事」
私は叩頭し、その一言を賜った。それで勝負は決した。
どこからともなく、拍手が起こった。
私は見学していた人たちに帽子を脱ぎ、一礼をした。
その時だった。
ライアンの猟犬が一匹、王に向かって飛び掛かっていった。
私は素早く王の前に立ちはだかり、猟犬に雷魔法を猟犬に与えた。
その衝撃で猟犬はショックで倒れこんだ。
「国王陛下、お怪我は?」
「大事ない」
大勢の人が王の周りに集まり出す。私は気絶した猟犬を撫でた。
すると何かがすっと飛び立っていくのを感じた。
「ライアン!貴殿の犬が父上に粗相を働いたぞ!」
アッシャーがライアンを糾弾する。
「父上、俺の管理不足でこのような事態を引き起こしてしまい、申し訳ございません。どのような処罰も受け入れます」
「お待ちください。この猟犬には呪いがかかっていました。ライアン様の過失ではございません」
私は声を張り上げた。その場にいる全員の視線が私に向けられるのを感じた。私は強い意志で宣言した。あの感触には覚えがある。三人の呪いが解けた時と同じ気配がした。
「呪い?それが原因で猟犬が急に国王陛下を襲ったと申すか?」
「国王陛下、ライアン様には咎はございません。どうか寛大な処置を……」
私は深く頭を垂れ、王の言葉を待った。その時間は数十秒に過ぎなかったが、私にとってはとても長く感じた。背筋に冷たい汗が落ちていく。王は静かに思案して重々しく口を開いた。
「顧問魔術師クラキの言葉に免じて、今回の件は不問とする。ただし、至急呪いをかけた者を捜索せよ」
近衛兵たちがはっと返事をした。私はほっと胸を撫で下した。
猟犬は一時的に隔離され、城の魔術師たちが魔法の解析を行うために城に連れ帰ることになった。
一波乱あったハントはこれにてお開きということになった。
王は馬車に乗り、一足先に城へと帰っていった。次々と客たちもグリーン伯爵邸を後にする。
私はシャーロットとの別れを惜しんだ。
「シャーロット、今日は一目会えてよかったわ」
「こちらこそ、マヤ。国王陛下を守ってくれてありがとう。またパーティーでね」
二人は抱き合うと、私は馬車に乗り込んだ。そして、朝早かったことと、初めてのハントの疲れから馬車の不規則な揺れとともに眠り込んでしまった。
お読みいただきありがとうございます。
イギリスで有名なキツネ狩りは女性も参加できたそうです。
それでは続きでお会いしましょう。




