第三章 国際博覧会と恋の行方~お弁当と魔獣と~
私は持って来た布を敷き、バスケットを開いた。
「お弁当です。あんまり豪華なものは作れなかったんだけど」
「野戦食に慣れているから構わない。この丸い包みは・・・・・・」
「おにぎり。前に『これなら十個は食べれる』って言ってたから、たくさん握って来たよ」
「そうだ。確か、夏の実習で・・・・・・っつぅ」
またエヴァンは額を押さえた。歯を食いしばり、痛みに無言で耐える。
「エヴァン、大丈夫?」
「ああ。こっちの揚げ物はなんだ?」
「ミートボール。向こうでの味を再現したかったんだけど、醤油が無くて・・・・・・」
「旨い。しかしショーユとはなんだ?」
「豆を使った調味料の一種だよ」
二人はしばらく黙って弁当を食べた。その後、私は用意してきた魔法陣を並べた。
「それじゃあ、今日のスペシャルゲストを呼ぶね・・・・・・何処より参ぜよ、来訪者。我が血を代償に我が呼び声に応えたまえ。我が名はマヤ・クラキ。いざ現れん」
ぽんと音がしてサフィラが現れた。エヴァンが喜びで耳がピンと立つ。
「お前は確か、サフィラ・・・・・・!」
「そう、私たちが最初に話すきっかけをくれた子」
サフィラを抱きかかえてエヴァンへと渡す。
それから次々とあの日、湖畔で呼び出した魔獣たちを召喚した。
エヴァンは無表情の中に喜びが隠せなくなる。
「エヴァン、思い出して。一緒にあの美しい湖に遠乗りに出かけたこと、釣りを教えてくれたこと、魔獣たちと触れ合ったこと」
エヴァンは強い頭痛とともに混乱している様子だった。
苛立ったエヴァンは私を芝生の上に押し倒した。
上に被さるようにエヴァンは激昂して私を睨みつける。
「うるさい!お前のことを考えると頭が痛くなって、苛立ってくる・・・・・・!
自分が自分じゃなくなってくる。もう放っておいてくれ!」
「エヴァン!私には貴方が必要なの。お願い、離れてかないで!」
私はエヴァンを強く抱きしめた。
魔法に心かき乱されながら、必死に足掻くその姿は悲しくて愛おしかった。
「オレはこんな感情を知らない。違う、忘れているのか・・・・・・?」
ふっとエヴァンの身体から力が抜け、エヴァンが覆い被さって来た。
腕を回した右肩のあたりから何かが飛び立っていった。
私はなんとかエヴァンの下から這い出し、エヴァンの胸に耳をあて心音を確認する。
その時、エヴァンが意識を取り戻した。
「マヤ!オレの上に乗って何をしているんだ!?」
「ああ、鼓動を確認してたの。やっぱり、元に戻ったの?ちょっと背中を見せてくれる?」
私は好感度を表示させる。真っ赤なハートがエヴァンの胸に漂っているのを確認した。
「元に戻った?何を言っている?おい、服を脱がそうとするな!」
私たちがぎゃあぎゃあと言い争っているとそこにデヴィンとリアンが現れた。
「ここからは私たちも参加させてもらおう」
「リアン先輩とデヴィン!」
「そうですよ、もう魔法が解けたからには遠慮する理由はありませんからね」
何故か二人とも妙に憔悴している。
「訳が分からん。説明を求める」
エヴァンが起き上がり、憮然として胡坐をかく。
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