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最強の聖女は恋を知らない  作者: 三ツ矢
第二部 エンディングまであと一年~再来~
84/201

第三章 国際博覧会と恋の行方~水中散歩~

私は早速デヴィンとリアンに手紙を書いた。

『二人のお陰で無事約束を取り付けることができました。

明後日、エヴァンと国際博覧会に行って、その後公園を散策したいと思います』

手紙をエミリーに渡して、私は右足を見た。腫れた足首には湿布をして包帯を巻いてある。

(筋を伸ばした様子も無いし、ただの捻挫だと思うけれど、明後日これで国際博覧会を見て回れるかな……)

そんな心配をしながらも私は戦いの疲れが出て、そのまま眠ってしまった。


 エヴァンとの約束の日、なんとか杖をつきながらなら歩くことができるまで回復した。

エミリーに手伝ってもらいながらなんとか支度をした。

外に出ると、エヴァンがスーツ姿で迎えに来ていた。


「おはよう、エヴァン。迎えありがとう」

「おはよう……足は大丈夫か?」


義務的にエヴァンは具合を尋ねた。

そこに一かけらの優しさを見出そうとしても難しかった。


「ええ、なんとか歩けるわ」

「それなら心配するな……その足じゃ馬車にも乗れないだろう。失礼」


エヴァンは私の返事も聞かずに軽々と私を抱え上げた。


「え、エヴァン?!」


動揺する私を無視してまるで荷物を扱うように馬車に乗せた。


「この方が早い……どこへ行く?」

「えっと、国際博覧会へ」


 馬車が入口に着くと、エヴァンはすぐさま降りて馬車の後ろに括り付けられていたものを降ろした。


「エヴァン、それって?」

「車椅子だ……お前の世界では使わないのか?」


表情一つ変えずエヴァンは車椅子をセッティングしていく。


「いいえ、私の世界では普及しているけれど。こちらではあまり見かけなかったから」

「軍を退役した祖父が先の戦争で足を負傷してな。その遺品だ。嫌ならやめておくが」

「使わせてもらうわ……車輪を動かすところがないけれど、どうしたらいいの?」

「俺が押す。行きたいところを言え」

「あ、ありがとう、エヴァン」


私はまたエヴァンに抱えられて車椅子に座らされた。

エヴァンは手慣れた様子で車椅子を押していく。

この心遣いはエヴァンの生来の物で私に対してだけでなく、誰に対してもすることなのだろう。

この青年はクールで自制心が強いが、やはり優しい性格なのだ。


「エヴァンはもうどこか回った?」

「外の警備ばかりで特にどこも見ていない」

「そう、それじゃあ私エヴァンとぜひ見たかったパビリオンがあるの」


私は地図でそこを示した。


「アクアリムか……」

「そう、卓上の水槽での飼育は可能になったけど、

 ここまで大規模で壁一面に水槽を設置するなんて画期的だわ」

「本当だ。まるで水の中にいるみたいだな」

「そうね。魚だけでなく水草やサンゴや貝も展示されていて水底を散歩しているみたい」


二人の前を悠々と一匹の魚が泳いでいく。

二人ともその雄大な姿に目を惹かれる。ぽつりとエヴァンが呟く。


「あの魚、食うと旨いんだよな」

「どれ?」

「あれだ。あの背中が青いやつ」

「そうなの。エヴァンは魚が好きなの?」

「肉も好きだが、魚も好きだ。肉と違って魚は獲れたてが美味い」

「一緒に釣りに行った時の魚も美味しかったわね」

「そうだな……あれ?オレはクラキと一緒に釣りに行ったことがあったか……?」


水槽に映るエヴァンが頭を抱える。

狼の耳がぴくぴくと痙攣する。


(エヴァン、ごめんなさい……)


私との思い出を思い起こさせるのは辛いことだと分かっているけれど、

今はこれしか方法がないのだ。


「エヴァン、向こうの水槽も見てみよう。綺麗な魚がいるから」

「!ああ。そうだな」


エヴァンははっと気付いたように面を上げた。

二人は海底を散歩するようにアクアリウムを見学していった。


「昼はどうする?」

「お昼は用意してきたの。エスメパークまで行ってくれる?」

「それくらいの距離なら歩いていった方が早そうだな」


ガタガタと石畳の上を車椅子が進む。


「エヴァン、軍での仕事はどう?」

「今は国際博覧会の警備が主な任務だ。テロリストや窃盗など魔法を使った犯罪を取り締まるべく、細心の注意を払っている」

「毎日ご苦労様です」

「当然の義務だ」


エスメパークは都市部にありながらも森の中にいるかのような美しい公園でブルックリン川からの支流が流れ込み、穏やかな小川のせせらぎが聞こえる。


「今日は平日だから人も少ないね」

「そうだな」

「あの小川の近くの草原に座ろう」

「わかった」


私たちは公園の原っぱに座り込んだ。


「本当に誰もいないね」

「そうだな」


お読みいただきありがとうございます。

引き続きよろしくお願いいたします!

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