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幕間 魔女の内緒話
「あら、一匹戻ってきてしまったわ」
女の細い指に紫の蝶が止まる。その蝶を女は金細工の虫籠へといれた。
「案外手強いね、彼女は。流石聖女様だ。君は彼女にどういう印象を持った?」
「人の悪意にも好意にも無頓着なお馬鹿さん。わたくしの嫌いなタイプ」
「それは手厳しい」
男は押し殺したように笑い、女は手元にある金細工の虫籠の中の蝶に目をやった。
「わたくしの魔法を退けるなんてますます気に入らないわ」
「でも、戻って来たのはまだ一匹だけ。あのブルジョワジーのガキのだけだ。彼女はこれから国際博覧会の運営もある。そう簡単にはいかないよ。その蝶はどうするんだい?」
「しばらくはこうして封印しておくわ。何しろ妖精王の加護付きだもの。魔力を察知されでもしたら厄介だから」
女は指先に残った蝶の鱗粉をふっと軽く桃色の唇から吐息を吹きかけた。それだけの所作で女から魔力の残渣を消し去った。
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夕方より、再び残り三人のうち誰かの攻略を始めます。
どうぞよろしくお願いします。




