第三章 国際博覧会と恋の行方~ワインを貴方と~
それから私は暇を見て、時折ギルドに顔を出すようにした。
ギルドには多くの人種の人間が出入りし、通訳としての語学力は非常に役に立った。
それだけでなく、彼らとの会話はパビリオンの文化的背景を理解するのにとても有意義だった。
デヴィンの姿も時々見かけることがあった。
「こんにちは、デヴィン」
「……こんにちは、クラキ先輩。またいらしてたんですか?」
「ええ、ここには色んな人が来るから。国際情勢や宗教観、文化的見地を学べて、とても楽しいわ」
「国家の顧問魔術師がこんなところで油売ってていいんですか?」
「あら、心配いらないわ。ここでも十分仕事をこなせるから……もしかして、心配してくれているの?」
「心配なんかしていませんよ!」
「今日の予定は?デヴィン」
「今日はこれから帰って書類を片付けるだけですが、何か?」
「実はお願いがあるんだけど、聞いてくれる?」
「……一体何ですか?」
「今日これからフェアリーライトパレスでワインのコンテストをするの。
良かったら一緒に行かない?」
「僕もですか?」
「私あまりこちらのワインに詳しくなくって。デヴィンの力を貸してくれない?」
「……良いですよ。こないだの借りもありますし」
「それじゃあ、行きましょう……止まって!」
私は馬車を止めて、デヴィンとともに乗り込んだ。
「フェアリーライトパレスまで」
それっきり二人の間には沈黙が降りた。その気まずい雰囲気の中で私はデヴィンを観察した。
デヴィンは私と目を合わさないように窓に視線をやっている。
僅かに苛立っているように口はぎゅっと結ばれている。
本来のデヴィンであれば周囲の人間にとげとげしい態度をとるはずがない。
これが呪いなのだと私は改めて実感し、なんとしても解除しようと心に決めた。
会場に着き、警備兵たちに声をかけると顔パスで通してくれた。
「今日のワインコンテストってどうするんですか?」
「国際博覧会のイベントとして正式にワインの格付けを行うことになったの。
政府のお墨付きを与えることでより良いワインの品質の向上と……」
そこで私は言葉を切ってデヴィンを見つめて微笑んだ。
「ブランド化されたワインはより輸出が増える。
貿易商であるあなたのお家もワインを扱っているのでは?」
「・・・・・・なるほど。ただおしゃべりのためにギルドにたむろしていた訳ではなさそうですね」
デヴィンが苦々しい表情で、ちょっと皮肉気に呟いた。
私ができることでデヴィンのためになることをずっと考えていた。
やっと思いついて連れ出してきたが、やはり険悪な態度を取られるとほんの少し胸が痛む。
「これは顧問魔術師のマヤ・クラキ様と確かハートウィック家の……」
「デヴィンです。ギルド長。本日はマヤ・クラキ様のご紹介により勉強させて頂きに参りました」
「そうか、そうか。そう堅苦しくなくな。それでは、始めてくれ」
一人ずつワイングラスが配られ、ワインボトルがテーブル一杯に並べられた。
私がチラリと隣を見るとデヴィンが丁寧にテイスティングをしていった。
その瞳はいつもの甘さが抜け、真剣そのものだった。
私は少し微笑みながら、ワインを吟味していった。
とあるボトルの前でデヴィンは目を見開いた。
「どうしたの、デヴィン?」
「クラキ先輩、このワインは素晴らしいです。華やかな香り、芳醇な味わい、鮮やかな色。
どれをとっても一級品です」
「私も頂くわ」
デヴィンが私のグラスに緋色の液体を注ぐ。
「あなたの言う通り、このワイン、とても美味しいわ。あなたの舌は確かね」
「これぐらい大したことではありませんよ」
デヴィンは少し照れた様子で頬をかいた。
私たちはそれから次々とワインを試飲していった。
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