第二章 魔法をかけられて〜シンボル〜
それから一週間後には王立軍による警備の演習の視察が行われた。
その中には魔法特務士官であるエヴァンも参加する予定になっていた。
私はエヴァンに会いたい気持ちと不安な気持ちの間で揺れ動いていた。
会場となるほぼ完成したフェアリーライトパレスが聳え立っている。
開場すると魔法で灯されたいろんな色の灯火のランプが無数に飾られるのでそう名付けられた。
その前に広がる公園の芝生にはいくつものテントが建てられている。
私は若い兵士に案内されてエヴァンのテントを訪れた。
「こんにちは、エヴァン……」
テントのタープを上げるとそこには半裸になったエヴァンが背を向けていた。
「ごめんなさい、エヴァン。着替え中に!」
「別に気にするな。それで何の用だ?クラキ」
「ああ、えっと、今日のスケジュールの確認よ。一部変更になったから連絡に来たの」
「後で見る。そこに置いておけ。こんな小さな用のために来たのか?」
小さなことと言われて胸が痛んだ。エヴァン頭上には黒い小さなハートが浮かんでいる。
「ええ。それじゃあ、演習でまた」
私はテントを出ていった。その私をエヴァンは怪訝な顔で見送った。心の奥底で何かがざわりと騒いだ。エヴァンはその感覚を奇妙に思ったが、これから始まる演習のために心を静めた。
テントを出た私は深い溜息をついた。
「わかっていたことだけれど、やっぱり全員三年前と同じように戻っているわね」
「でも、マヤ。さっきエヴァンの背中に何かあったの気付かなかった?」
「そういえば、背中に紫色の蝶らしき羽根の刺青があったわね。あれって何?」
「あれは魔法の刻印だよ」
「つまり四人ともあの刻印があるってこと?」
「そうだと思うよ。それにしてもシンボルまであるなんて、かなり強力な魔法使いだね」
「そうなの?私にもあるのかな、シンボル」
「マヤの魔力の気配から察するにサクラの花だね」
なるほど、異世界に来ても日本人の心が残っているんだなと私は思った。
あちらの世界でもまだ桜が咲くには早すぎる。
この世界に残ると決めた時自立し強く生きようと誓ったのに、私はほんの少しだけ元の世界のことを恋しく思った。
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