第二章 魔法をかけられて~眩暈~
翌日、私は国際博覧会の書類を持ってライアンを訪ねた。すると従僕が現れて私に告げた。
「ライアン様は只今外出中ですので私が預からせて頂きます」
「そうですか……」
落胆しながら王宮を歩いていると庭園でレイラと仲良く談笑しているライアンの姿があった。
好感度を確認してみるとやはり小さな黒いハートが浮かんでいる。
ショックを受けた私はめまいがした。
ライアンに早く会おうと国際博覧会の書類を作るのに昨日徹夜したのが祟った。
世界がぐるりと回る。倒れこむ直前私は誰かに抱きかかえられた。
「大丈夫かい、マヤ殿」
「貴方はアッシャー王子?」
「ええ。お怪我はありませんか?」
大丈夫ですと答えて私は自分の足で立ち上がった。
「顔色も良くないよ。多忙だとは思うけれど、お休みされた方が良い」
「ご心配をおかけして申し訳ありません。アッシャー王子のお手を煩わせてしまい失礼しました」
「その様な呼び名ではなく、アッシャーと呼んでくれ」
そっとアッシャーは私の手を握った。長い金髪がさらりと流れる。
「アッシャー……様?」
「貴方はこの国に無くてはならない存在です。ご自愛ください」
水色の瞳が優しく私を見つめる。
私は一瞬だけその優しさに縋ろうとしてしまった。しかし、すぐに気を取り直した。
「助けていただいてありがとうございました。本日はこれで失礼します」
私は深々と頭を下げ、その場を辞した。
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その様子をレイラとライアンが見ていた。
「あれ、マヤ様ではありませんか?」
「ああ、クラキ殿ですか」
ライアンは不思議に思った。
つい先日までずっと大切に想っていたはずだったのに、今では何の感情も湧いてこない。
その時マヤが急に倒れかけた。咄嗟に駆け寄ろうとしたが、そこには兄がいた。
起き上がった後も手を握り、親し気な様子だ。
それを見て一瞬もやっとした感情が浮かんですぐに消えた。
「お似合いですね、あのお二人」
「そうですね。それではレイラ嬢、次は宝物庫をお目にかけよう」
レイラがそれは嬉しそうに頷いた。
それから少し、両手を揉むように握りしめた。
「ああ、これは失礼。お手をどうぞ、レディ」
レイラはまるで白露に濡れたバラのごとく美しく無垢な笑顔でその手を取った。
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