第二章 魔法をかけられて~反逆者の行方~
学生時代と違って会いに行くのは時間的にも物理的にも無理だ。
それに私の両肩にはとある任務が課せられている。
「・・・・・・国際博覧会」
私が提言してライアンやリアンたちに推してもらった企画だ。
主に西大陸の国々の産業の発展と文明の発達を目的とした祭典である。
一般市民への開放の他、各国の要人を招待し、国際会議に晩餐会も催される予定である。
二年前から準備が始まって今年の夏から催されることになっている。
その運営の一端を発起人たる私が担っているのだった。
「落ち込まないで、マヤ。彼らは元からある気持ちを魔法によって
無理矢理捻じ曲げられているだけだから、
きっかけさえきっかけさえあればその気持ちを取り戻すことができる・・・・・・かもしれない」
「妖精王なのになんでそんなにあやふやなの?」
「今回の魔法はボクにとっても初めて見る魔法と呪いだからね。この世界のものじゃないよ」
「それって私と同じく召喚された異世界の人間がやったってこと?」
「人間かどうかはわからないけど」
「つまり、召喚能力のある人間が協力したってことよね?
私のことをよく知っていて、恨みに持ちそうな召喚士って言えば・・・・・・イーサン元先生!」
イーサンは王国の破滅を目論む反逆者であった。
それまで私にとっては優しい教師だったので、大きなショックを受けた。
イーサンの計画を無に帰した私と四人に対して恨みを持っていてもおかしくない。
「その可能性はあるね」
「刑務所に面会に行きましょう」
「いない?」
重犯罪者を収容する刑務所に来た私だったが、イーサン・テイラーなる人物は存在していないと刑務官が答えた。
「他の刑務所の可能性は?マヤ」
「いいえ、王国にはここしか魔法を無効にする独房はないの・・・・・・誰かによって連れ出された?」
「一体だれが?」
「わからない。けれど、かなりの権力を持つ人間というわけね」
イーサンは本来なら出所させることができない謀反人だ。
つまり、それを秘密裏に連れ出すことができるほどの地位を持つ人間が陰にいる。
その人間は一体何故私たちにこんな呪いをかけたのだろうか?
深く暗い闇が胸の中を満たしていく。
この状態では誰を信じたらいいか、疑心暗鬼に陥ってしまう。
私はオーベロンの存在に心から感謝した。
「ありがとう、オーベロン。貴方が知らせてくれなかったら、どうしたらいいかわからなかったわ」
「ボクはマヤの加護者だからね。これぐらいは当然だよ」
本当にオーベロンがいなければ、私はもっと心細かっただろう。
相手がわからない悪意に立ち向かうには、今の私は孤独で不安だ。
(四人にはずっと会えなくても支えられていたんだな・・・・・・)
お読みいただきありがとうございます。
イーサン・テイラーはどこに消えたのか?
どうぞお付き合いお願いいたします。




