第十章 国の危機~契約終了~
「本当?良かった……あのね、オーベロン、お願いがあるの」
「何だい、マヤ?」
「イーサン先生を治療してほしいの」
「何故だい?彼の自業自得だと思うけれど」
「イーサン先生は生きて自分の罪を償うべきだわ。お願い、オーベロン」
「マヤに言われたんじゃ従うしかないな。マヤは私のパートナーだからね」
オーベロンはすっと手を伸ばし、イーサンを治癒させた。
「私は……アドラメレクは?」
「イーサン先生、私たちがアドラメレクを倒しました。貴方には刑に服してもらいます」
「何だって?」
「イーサン先生の家庭がどんな状況でどれだけ辛い境遇だったか私には分かりません。
けれど、自分が不幸だからと言って周りの人間を不幸にしていい理由にはならないんです。
あなたはその能力で内側から国を変える努力をすべきでした」
「イーサン・タイラー、国家反逆罪および殺人未遂の罪で貴様を捕縛する」
ライアンとエヴァンが後ろ手にイーサン先生を縛った。
「これで、王国の危機も終わり。私ももう元の世界に戻らなきゃいけないの?」
「そうだね、マヤ」
そんなと四人は言葉を失う。私の存在が消えようと身体が白く輝き始めた。
「今までありがとう、皆。私、ここに来て三年間。特に最後の一年はすごく楽しかった。
絶対みんなのこと忘れない」
涙があとからあとから零れて前が見えない。
「そんなの嫌です!マヤ先輩ともう会えなくなるなんて」
「マヤはオレにとって必要な存在だ」
「マヤ君とはこれからもずっと一緒にいたい」
「マヤ殿!」
私はライアンに抱きしめられた。
「絶対に離しません」
「私も……帰りたくない。この世界にいたいよ……」
縋るようにライアンにしがみつくが、指先からだんだんと感覚が失われていく。
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次で第一部完結です。
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