第十章 国の危機~戦いの始まり~
イーサン・テイラーの野望
召喚の間のドアを私はノックした。
「イーサン先生、クラキです」
「どうぞ、入りたまえ」
「失礼します……」
私が入ると召喚の間は異様な空間になっていた。
何匹もの魔物が存在し、禍々しいオーラを醸し出している。
「イーサン先生、これは一体?」
「春の女神になったようだね、おめでとう。それでは魔法陣の中に入ってもらおうか」
柔らかな栗毛に鳶色の優しい瞳はそのままなのに、黒い気配を纏ってイーサン先生は有無を言わさず私を魔法陣へと引き入れた。
「私はね、ずっとこの召喚能力を使って王国を支配することを計画してきたんだよ。
私の生まれは低級階級で、立身出世の道などなかった。
しかし、神は私に魔力と召喚能力を授けてくれた。
母は病弱で死に、父は仕事を無くして酒浸りになった。
こんな階級社会吐き気がする。それならいっそ、私が新たな国を作った方が早いと思ってね」
「王国の危機とはイーサン先生のことだったんですね」
「いかにも。最初は生贄にこの学校の生徒全員を差し出して、召喚しようと思っていたんだ。しかし、間抜けな神官長と予言者は私の意図も知らず、異世界から君を呼び出した。そして何も知らない君をわざわざ私のところにやってこさせた。初めて見た時から君の才能には気付いていたよ。だから、わざわざ良い教師のふりをして君に取り入った。最初は排除しようと思ったが、最強の魔物を呼び出す生贄として君を選んだんだ」
「そんな……嘘でしょ!?」
「たった数滴で強力な精霊を使役することができる君の血だ。致死量となればどんな魔物が召喚されるかな?」
「何故精霊を呼び出したことを、イーサン先生が知っているんですか。まさか?!」
「そうだ、あの泥の魔物は私が用意したものだ。 君という危険因子を取り除こうと思ってね。しかし、流石に君はついていた。あの四人が君と同じグループになるなんてね……それでは召喚を始めようか」
イーサン先生は剣を持って私ににじり寄って来た。
私の手元には魔法杖もメイスも魔法陣の書かれた紙もない。
(どうしたらいいの?誰か助けて!)
魔物のひしめくこの逃げ場のない部屋で私はただひたすら祈った。
ここまでお読みいただきありがとうござます!
いよいよ第一部の黒幕が明らかになりました。
果たしてマヤはこの国の危機を打破することができるのか?
どうぞよろしくお願いいたします。




