第二章 運命の相手候補~ライアン~
ライアン王子 登場
私は脱兎のごとく寮を飛び出した。
校内を走っていると、廊下の向こう側から気配を感じた。
女子たちが遠巻きに視線を送っている。その相手は・・・・・・
「ライアン様……」
ライアンはこの国の第二王子だった。
少し癖のある金髪に碧眼。
細く通った鼻筋に形の良い唇は微笑みをかたどっている。
麗しい美貌のためだけではなく、確かにキラキラとまるでスノーダストのように輝きを纏っている。
「これはこれは異邦人、クラキ殿。そんなに急いでどちらにお出かけに?」
「え、いえ。ちょっとした探索と申しますか……」
「それは、お忙しいところを失礼いたしました。何せ、生徒会へとお誘いしてもお断りになるくらいですからね、ご多忙でしょう。
更に首席でありながら常に自己研鑽を怠らない、
流石救世主でいらっしゃる。
どうか、この国の未来をお救い頂きますよう」
「あ、あのライアン様ちょっと……」
「何か?貴方にとって俺など興味などないでしょう」
怪訝そうな顔をしてライアンが立ち止まった。
ライアンは人望厚き、この学園の生徒会長であった。
私も能力を見込まれて生徒会へ勧誘を受けたことがあったが、多忙を理由に断ったのだった。
(しかし、なんだろう。この冷たい微笑みは?!)
私は話しながら背筋に冷たいものが走っていった。耳元でパックが囁く。
(好感度の評価を発動するんだ)
(好感度?)
言われるがままに無言で魔術を発動させる。
するとライアンの横に小さな黒いハートが浮かび上がった。
(何これ?!)
(好感度、最低だね……)
「申し訳ないが、用がないならこれで」
「はい……」
ライアンは鋭く冷たい目で私を見つめて立ち去っていった。
私はその後ろ姿を見送ると、また制服を翻し、走り出した。