第七章 ハーベスト祭の夜~ライアン視点~
悩める男心その四
今年もやって来たハーベスト祭が。
俺は心底うんざりしていた。
生徒会長として運営で忙しいというのに菓子と花を持った令嬢たちがひっきりなしにやってくる。
ちょっとは俺の事情も考慮しろと思う。
この王子たる俺がその辺の女になびくわけないというのに。
無駄だということに考えが至らないのだろうか。
しかし、俺の笑顔は崩れない。
だが、マヤ殿が菓子と花を渡してきた時は一瞬驚きで呼び止めようとしてしまった。
他の菓子と花は従僕に処分させたが、これだけは手元に残っている。
華やかさのかけらもない、質素な焼き菓子と生花ですらない紙で出来た花が一輪。
コンサートのお礼って言ってたな。
それに、この手作りの様子からして、ハーベスト祭の趣旨を理解してないような気がする。
マヤ殿の努力には一目置いている。
才能だけで生きていると思っていたが、初めて剣を合わせてそれに気付かされた。
あれほど自分に厳しい人間を俺は見たことがない。
彼女の作った物なら好敵手として受け取らなくてはならないと俺は思った。
焼き菓子は他の令嬢たちの生クリームやチョコなど高級食材をふんだんに使ったものとは違う、飾り気のないものだった。
マヤ殿に似ているな。
普段は決して口にしないだろうその菓子を俺はじっくりと賞味した。
バターと小麦粉と砂糖だけではない、優しい甘さがどこかでした。
ここまでお読みいただきありがとうございました!
次回から舞踏会編へと話は進んでいきます。




