第七章 ハーベスト祭
新学期が始まると学園は一層賑やかになった。
それはどうやら帰省していただけでなく、収穫祭が近いためであった。
「ハーベスト祭?何をやるの、シャーロット?」
「マヤ、あなたねぇ、三年目なのに何寝ぼけたこと言っているの?」
「ごめん、一昨年も去年も勉強と鍛錬で精一杯だったから」
「全く。ハーベスト祭は豊穣の女神様の加護に感謝して美味しいご馳走を食べるの。それからモルックっていうゲームをしたり、バザーを開いたり……あ、あとお世話になった人にお菓子とお花を贈るわね」
「お菓子とお花を?」
「そう。だから今お菓子屋さんとお花屋さんは大盛況。人気のお店は予約でいっぱいよ」
そうなんだと納得する私にシャーロットはこっそりと悪戯っぽく微笑んだ。
ハーベスト祭当日、学園はお祭り騒ぎだった。
生徒じゃない人物もたくさんいるようで、人探しには骨が折れた。
しかし、私にはキラキラオーラの気配を感じ取ることができた。
そこで初めに見つけたのはデヴィンだった。
女子の先輩たちに囲まれたデヴィンに声をかけるのには少し勇気が必要だった。
「デヴィン君!」
「マヤ先輩。すみません、先輩方少し失礼します」
デヴィンは取り巻きに断って私の方に歩いてきてくれた。
「どうしたんですか?」
「はい、これ。デヴィン君にはとってもお世話になったから。洋服ありがとう!」
それじゃあと私は人ごみの中に突入していった。
遠くでデヴィンが呼ぶ声がしたが気のせいだろう。
続いて道場には変わらずエヴァンが鍛錬をしていた。
「エヴァン君、今少しいい?」
エヴァンが肩に大太刀を背負いなおして、こちらに出入り口までやってきた。
「どうした?」
「はい、これ。エヴァン君にとっても素敵な場所教えてくれたからお礼!」
それじゃあと私は急いで道場を後にした。
エヴァンがなんとも形容しがたい表情で見つめていたことにも気づかなかった。
リアンの気配もいつも通り図書室にあった。
私は静かに入室してリアンに声をかけた。
「リアン先輩、お話しても大丈夫ですか?」
「どうしたんだい、マヤ君」
本から顔を上げたリアンが不思議そうな顔をして見上げてくる。
「はい、これ!先日はお家に呼んでいただいてありがとうございました」
それじゃあと私は図書室を辞した。
リアンが呼び止めようとしたが図書室だったことで躊躇したことには気が回らなかった。
そして難関はライアンだった。
生徒会長であり、学園の人気者であるライアンには常時周りに人がいた。
仕方なく私はモルックの表彰式のためにグラウンドに来るライアンを待ち伏せた。
幸運なことにちょうど、一人で歩いていた。
「ライアン様、忙しいところすみません!」
「マヤ殿か。一体何かな?」
柔和な笑みを浮かべてライアンは足を止める。
「はい、これ!コンサートありがとうございました」
それじゃあと私はグラウンドと逆方向に走り出した。
受け取ったライアンが驚いて手を伸ばしたのも見えなかった。
私は召喚の間に向かった。
校内に見当たらなかったので多分いると思うのだが、私は扉をノックした。
どうぞという声で開けるとイーサン先生が魔法陣を描いている最中だった。
「イーサン先生、今大丈夫ですか?」
「クラキか・・・・・・一体どうしたのかな?」
「はい、これ。いつも授業を教えてくれているお礼です!」
それじゃあと私は魔法陣の内容が気になりながらも召喚の間を立ち去った。
イーサン先生がくすりと笑ったことも私は知らなかった。
その後、夕食のご馳走をたっぷりと食べた私は自室に戻ってシャーロットに近づいた。
「シャーロット」
「マヤ、どうしたの?」
「はい、これ。いつも私にいろんなことおしえてくれてありがとう」
「……あたしに?もしかしてマヤこれ、いろんな人に配ったりした?」
うんと私は元気よく頷いた。
「今日は忙しかったからもう寝るね!おやすみ、シャーロット」
私はベッドに入ると穏やかな眠りについた。
シャーロットは手の中の手作りと思われるおいしそうなお菓子と鮮やかな色紙で折られた花を見ていた。
「これって本当は意中の異性にあげるものなのよ、マヤ・・・・・・」
今日、一体何人の男子が犠牲になったのだろうか。
シャーロットは心の中で深く陳謝した。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
ハーベスト祭でした。
続きは後程アップしますが、受け取った四人の視点に移ります。
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