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最強の聖女は恋を知らない  作者: 三ツ矢
第一部 エンディングまであと一年
25/201

第五章 危険な夏合宿~戦闘~

対決

 前衛の二人が剣を抜き放つ。

後ろでは背負った弓矢をデヴィンが構え、リアンがカードホルダーからカードを取り出す。

ライアンとエヴァンがそれぞれの武器で両手を切り落とす。

しかし、すぐに泥の魔物は再生してしまう。

デヴィンが目を狙って弓矢を放つがそれも巨大な手に阻まれてなかなか当たらない。

泥の魔物は巨大な手で五人をまとめて潰そうとしてきた。

するとリアンのカードがぐるりと五人を取り囲み、結界が発動した。


「物理攻撃が効かない!魔法攻撃で対抗するしかない。こいつには何が有効なんだ?」

「水と土なんだから、凍らせるか、雷が有効なんじゃないのか?」


ライアンとエヴァンの会話に私は割って入った。


「炎です」

「炎?」


全員が怪訝な顔をしてこちらを振り返った。


「あいつを沼からおびき出して、熱風で乾燥させればただの土人形に戻ります……土と水を分離させるんです」

「なるほど、クラキ君の意見に私も賛成だ」

「それじゃあ、どうするんですか?あいつを乾かすほどの炎の大魔法が必要ですよ」


リアンが賛成し、デヴィンが問題点を挙げる。


「私が炎の精霊を呼び出します。ただ呼び出すのには少々時間がかかります。

その間、私の守護とあいつを引きずり出す役目をお願いしたいのですが……」

「わかった。俺とデヴィン、リアン先輩で奴をおびき出す。

多少なら炎魔法の心得があるからな。エヴァンはクラキ殿の護衛を頼む」

「任された」


エヴァンが短く返事をする。


「それではお願いします」


私は懐に忍ばせていた基礎魔法陣が描かれた紙を取り出した。


そこに呼び出したい精霊の属性を記入していく。




「オレの背中から離れるな、クラキ」


「わかった」




ちらりと三人の様子を窺うとライアンが炎を纏った剣で斬りかかり、デヴィンが炎の矢で注意を引いている。


その防御と援護をリアンが行っている。




「おい、気を散らすな」


「ごめんなさい!それでは召喚します……何処より参ぜよ、来訪者。我が血を代償に我が呼び声に応えたまえ。我が名はマヤ・クラキ。いざ現れん!」




ナイフで血を数滴垂らす。


魔法陣が輝き、燃えるように真っ赤に染まった。


そこに現れたのは炎の鬣をもつ白馬に乗った赤い髪に青い目の薄布を一枚ドレスの様にまとった女性型の精霊だった。




「はるばるお越し頂きありがとうございます。お名前は?」


「畏れることはない、同士たる異世界の旅人よ。我が名はフランマ。して、契約は?」


「前方におります魔物の排除です」


「うむ、では人間の子らよ。ちとお下がり」




その壮麗な姿を見て四人は驚きのあまり固まっていた。


おずおずと炎の貴婦人に道を譲る。




「土に帰せ、泥人形。そなたはここで乾いていけ」




フランマは扇を取り出し、扇に乗った真っ赤な花弁を飛ばす様にふっと艶やかに吐息をかけた。


効果は絶大だった。


ごうっと音を立てた熱風を泥の魔物は真正面から浴びた。


ポロリと魔物の手首が落ちた。


泥の魔物は訳が分からないという表情のまま身体がどんどん崩壊していき、ついにはただの土くれの山になった。




「これで満足かえ?」


「ありがとうございます、助かりました」


「妾など呼ばずとも、お主なら簡単だったろうに。


まあ久しぶりに異世界に来て面白いものをみせてもろうた。縁があればまた会おうぞ」




フランマは魅惑的な視線を私に向けた。


それからその姿がふわりと陽炎のように揺らめいたと思うと消えていた。


五人は揃って、やっと息をついた。


後には澄み切った小さな池が残った。


「あの魔物は一体何だったんですかね?」


「泥の魔物を倒すのに土と水を分離させるとは、着眼点が素晴らしい」


「あんなに高位な精霊を呼び出すなんて、クラキ殿は流石です」


「……腹が減ったな」




口々に好き勝手なことを言い始めたが、どうやらエヴァンの言葉が最も四人の状態を的確に表していたらしい。


私は恐る恐るカバンの中からバスケットを取り出した。




「お昼用意してたんですけど、馬車で乗り物酔いして食べそこなっちゃって。


お口に合うかわかりませんが、良かったらどうぞ」




バスケットをライアンが開ける。


中には丸い包みが丁度五つ入っていた。




「クラキ殿、これは?」


「おにぎりです。私の国の携帯食でこちらにもお米があったので食堂をお借りして作って来たんです・・・・・・あの上流階級の皆さんには粗末な食事ですよね。ごめんなさい」




ライアンからバスケットを奪おうとしたが、ひょいと躱された。




「有難く頂かせていただきますよ」




それぞれ一つずつおにぎりを受け取り、薄紙を破った。




「美味しいです。塩の味がする……中に入っているのはサーモン?」


「私の国では定番の具材なんです」


「炊き方が美味い。米など魚介と煮る時の添え物くらいにしか思ってなかったけど、意外な発見だよ」


「旨い。これならあと十個は食えるな」


「エヴァンは流石の大食漢だな。でも、なんだか懐かしい味がしますね」




五人はあっという間におにぎりを食べ終えた。


こっそりと私は四人の好感度を確認する。


するとオレンジ色のハートが浮かんでいた。




(パック、これってどういうこと?いきなり上がってるんだけど?!)


(共通イベントのボーナスだね。危機を一緒に乗り越えて好感度が上がったんだ)




それからなんとか道に戻り、洞窟の中でクリスタルローズを発見し持ち帰ることができた。




「お帰りなさい、ずいぶん遅かったですね」




イーサン先生はすっかり泥にまみれた私たちの姿に驚いた顔をした。




「魔物と遭遇しまして」




事の次第をライアンがイーサン先生に端的に説明する。




「それは大変でしたね。保養所には浴場があります。どうぞ中へ」




こうして私たちのひと夏の冒険が終わった。



お読みいただきありがとうございます。

夏合宿編手直しさせて頂きました。

ご意見、ご指摘、ご感想ありましたら、お気軽にどうぞ!


※話を統合しましたので、話数が変化しております。途中喪までお読みだった方すみません。

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