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最強の聖女は恋を知らない  作者: 三ツ矢
第一部 エンディングまであと一年
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第四章 個人イベント発生 ~ライアン~

 こうしてウィロウ王立魔法学園は試験期間を迎えた。

筆記も魔法実技も順調にこなし、残ったのは剣術の試験だった。

基本私は魔法杖を兼ねたメイスを使うのだが、一応レイピアの扱いも学んでいた。


「この試験ではトーナメント方式で戦って順位をつけさせてもらう。それでは呼ばれた者は前へ」


仮面を被り、胸当てを付けた形で試合を行う。

初戦を眺めていると、ライアンがゆっくりと歩み寄って来た。

いつもの柔和な微笑みとは違う真剣な表情である。


「クラキ殿、対戦表を見る限り、貴殿と当たるのは決勝になりそうですね」

「……そのようですね、ライアン様」


目の前では金属がぶつかり合う硬い音が響いている。


「頼みがあります。決して手を抜かないで頂きたい。俺は王族として恥じぬよう、全身全霊で戦います」

「わかりました。私も全力で挑ませていただきます」


ライアンは満足そうにこくりと頷いた。

試合はどんどんと進んでいく。とうとうライアンとの試合が始まった。

持ち手に華麗な装飾を施されたレイピアを右手に持ち左手を腰に当て、ライアンは剣を顔の前に掲げた。私も同様の動作をする。

決闘を行う上での礼に当たる。


「開始ッ」


教師の短い号令と共にライアンは素早く剣を突き出してくる。

私は剣を手首を使って剣先を弾き、ライアンの胴を狙う。

しかし、ライアンは素早く身を引き、リーチの差で届かず、私に隙が生まれる。

そこをライアンは逃さない。

踏み込んでくるライアンに対して、更にライアンの懐に飛び込む。

鍔迫り合いになり、剣と視線が絡み合う。

離れるよう審判役の教師が指示を出す。

再びライアンが鋭い斬撃を繰り出してくる。

それをいなすように私は躱し、お互いの位置が入れ替わる。

しばらく剣先を触れ合わせるだけの膠着状態が続いた。

剣を通してお互いの思惑を探り合う。

そして同時に踏み込み、レイピアが交錯する。勝ったのは……


「勝者、ライアン!」


二人は左手で仮面を持ち、右手で剣を掲げて礼をした。

五分ほどの対決だったのに、それまでの四回の試合よりも疲れた。


「ライアン様、お見事でした。胸を貸して頂いてありがとうございました」

「いや、こちらこそ、クラキ殿。凄まじい動体視力と反射神経でした。

それに何より柔軟でありながら勝負勘が鋭い。

学園に入学して初めて剣を持った者とは思えません。

異世界から来てからのクラキ殿の努力を見てとれました。

好敵手だと思っても構わないでしょうか?」

「そんな……好敵手だなんて勿体無いお言葉です」

「夏休みに有志で実戦形式の合宿をします。クラキ殿にもぜひ参加願いたい」

「喜んでお受けいたします」


ライアンは口の端に少しだけ狡猾な笑みを浮かべると道場から去っていった。


「パック、今のって?」

「今の言葉は共通イベントの前兆だよ!

今までずっとそういうイベントをマヤは無視してきたからね。やっと誘われるようになったか」

しみじみとパックが語る。

ライアンの後ろ姿には緑色のハートが浮かんでいた。


お読みいただきありがとうございます。

四人の関係が少しだけ進展しました。

次の話から夏の合宿へと参ります。

果たして平穏な合宿になるのでしょうか?

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