第三章 恋の始め方~召喚術の授業~
召喚術の訓練
「なんだか雰囲気が変わったね、クラキ」
「本当ですか?イーサン先生」
私は思わずイーサン先生の言葉に飛びついた。
イーサン先生は柔らかな栗色の髪を揺らす様に頷いた。
「君が異邦人だと忘れてしまいそうになるほど、学園に馴染んできているよ」
イーサン先生は鳶色の瞳を和ませながら微笑んだ。
「でも、君は救世主なんだから学問や武芸を疎かにしてはいけないよ。もちろん召喚術もね」
イーサン先生はこの学園において唯一の召喚術の講師だった。召喚能力を持つ人間はこのフローレンス王国においても数少ない。そのためイーサン先生は若くしてこの伝統あるウィロウ王立魔法学園の教師の職を得ているのだ。
「それじゃあ、おさらいだ。召喚術に必要なものは何かな?」
「魔法を媒介する杖やメイス、召喚用の魔法陣、召喚したものから身を守るための結界、そして魔力を持つ者の血です。高い魔力を持つ者の血を用いればその分強力な存在を召喚できます」
「その通りだ。では召喚対象はどんなものが考えられるかな?」
「魔物、魔獣、精霊、妖精、異世界の生物です」
「そうだね。では召喚した後必ずしなければないことは?」
「契約です。召喚者の提示する条件によって対象を拘束します。それが終わるまでは危険なので結界を解いてはいけません。召喚に応じても召喚者を害する恐れがありますので」
「素晴らしい。クラキは私がもつ生徒の中で最も優秀だよ。それじゃあ、何か簡単なものを召喚してもらおうかな。使役条件は一日の滞在」
はいと私は魔法陣を羊皮紙に描く。
(可愛いのが良いから小動物系の魔獣にしよう)
円と六芒星、地水火風の四大元素のシンボルと召喚対象の条件、結界を記入する。
そしてナイフで一滴血を垂らす。
「……何処より参ぜよ、来訪者。我が血を代償に我が呼び声に応えたまえ。我が名はマヤ・クラキ。いざ現れん!」
ポンと音を立てて現れたのは白い毛並みのリスとウサギの中間の様な生き物だった。
手足の先だけは青くなっており、足から身体へと白くなる美しいグラデーションになっていた。
「これはまた、珍しく可愛らしいものを召喚したね。私も知らない魔獣だ。
でも低俗だから言葉は発せないようだ。そんな時はどうしたらいいかわかるね?」
「はい、イーサン先生。貴方の名前は今からサフィラ。使役条件は一日の使役……いらっしゃい」
結界を解除するとサフィラは私の指の匂いを嗅ぎ、それからそっと身を擦り寄せてきた。
「よし。今日も満点。それじゃあ今日の授業はこれでおしまい」
「ありがとうございました、イーサン先生」
サフィラを抱きかかえて、教室を出た。




