第五章 魔女の呪い~最後のキス~
王にもシャンパンが手渡され、グラスを掲げる。
「本年は国際博覧会も開催された記念すべき年となった。来年も国民にとって幸多き年となるよう」
乾杯と王が声を張り、シャンパンを呷った。その瞬間、王がシャンパンを吐き出し、倒れ込んだ。
「シャンパンに毒が……!」
「医者を呼べ!」
「シャンパンを用意したのは誰だ?!」
アッシャーが鋭い声で問いかける。
「あの、私ですが、既に蓋の開いたボトルを渡されました……」
「誰からだ?!」
「ライアン王子殿下からです」
周囲の視線がライアンに集中する。
「俺ではない!何かの間違いだ!」
「ライアン様……なんて恐ろしいことを」
「レイラ嬢、こちらへ!」
レイラがアッシャーの胸に飛び込む。ライアンは顔色も青ざめ、声も失っている。
「ライアンをすぐに捕縛せよ」
「俺ではない!信じてくれ、レイラ!みんな!」
「それ以上何も語るな、ライアン!警備兵よ、ライアンを気絶させろ」
アッシャーが命じると警備兵が魔法杖でライアンを狙った。その時、私は階段を駆け昇り、ライアンの前に立ち塞がった。私に何本もの雷魔法が直撃し、その衝撃で崩れ落ちた。
「貴方は誰だ?」
「私は……マヤです。ライアン王子……お怪我は?」
身体が痺れて口も思うように動かない。それでもライアンが無事なのが見て取れた。
「クラキ殿か?! どうしてそんな姿に? どうして俺を庇ったりしたのですか?!」
「体が勝手に動いて、あなたを守らなければと……」
私はそこで気を失った。ライアンの目に涙が一粒零れる。そして、誰も気づかなかったが、その胸から一匹の蝶がひらりと抜け出した。
「マヤ殿……俺は何をしていたんだ。すまない。愛しています」
ライアンは心から自分の行いを悔い、守るように小さな老婆を抱きしめた。
「早く狙え!二人を取り押さえろ!」
アッシャーの声よりも早くライアンはこれが最後だと覚悟して、胸の中の死にゆく老婆にキスをした。
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いよいよ第二部終盤です。
どうぞ最後までお付き合いください。




