想い
今日は3ヶ月に一度の王都からの食料支給だ。
食料と鉱山の魔石の交換で、この村は成り立っている。
一応この村は王国と帝国の狭間にあるらしいが、王国側の領土という扱いになっているらしい。
「アルフ!今日は美味しいものたくさん食べれるね!」
食料は肉類や魚類から先に食べ、保存がきく穀物などはあとに食べる。
約3ヶ月ぶりの贅沢だ、彼女がはしゃぐのも無理もないだろう。
「そうだな、今日の晩ご飯は楽しみだ。」
「ねぇ…アルフ。結構時間もあるし、あの場所に行かない?」
「やっぱりここは気持ちいいねー!」
アルーナの綺麗な金髪が風にゆられる。
ここは村から少し離れた崖だ。ここからの景色は圧巻で、これを知らないものは損をしていると確信させるほどだ。
そんな景色は彼女によく似合っている。その姿はさながら絵画のようだ。
「ねぇ…アルフ…ここで助けてくれたこと覚えてる?」
随分昔のことだ。そんな昔の自分を思い出して情けなくなる。
「あぁ、あの時は無我夢中だったな。君を助けなきゃって。ゴブリン一体に焦ってさ。ちょっと情けないよね。」
彼女は首を振る。
「ううん、アルフは弱くても必死に私の事守ろうとしてくれた。そんなアルフはすっごく…」
彼女は一生懸命に、真っ直ぐ伝える。
「かっこよかった」
そんな一言は、そんなありふれた一言は。
彼女を1人の女性として認識させるには十分すぎた。
「あの時から私…あなたの事が…」
鼓動が早くなるのを感じる。
体があつい。
頭に振動が鳴り響く。
「好きでした。」