時は流れるままに 98
カウラはじっと誠に視線を向けてきた。
「プレゼントは絵か」
「ええ、まあ……」
そう言う誠に微笑んでみせるカウラ。
「とりえがあるのは悪いことじゃない」
そう言うとカウラは誠から目を離して珍しいものを見るように誠の部屋を眺め回した。
「漫画が多いな。もう少し社会勉強になるようなものを読んだほうが良いな」
誠もアイシャも歩き回るカウラを制するつもりも無かった。どこかしらうれしそうなそんな雰囲気をカウラはかもし出していた。
「気にしないで作業を続けてくれ。神前は本当に絵がうまいのは知っている話しだからな」
そう言うと棚の一隅にあった高校時代の練習用の野球のボールを手にするカウラ。
「カウラちゃんあのね……」
アイシャがようやく言葉を搾り出す。その声に振り向いたカウラ。引きつっているアイシャの顔に不思議そうな視線を投げかけてくる。
「あれでしょ?もらったときに見たほうが楽しみが増えたりするでしょ?」
「そう言うものなのか?クラウゼのふざけた意見を取り入れた絵だったりしたら怒りが倍増するのは確実かもしれないが」
今度はその視線を誠に向けてくるカウラ。確かに先ほどの意見のいくつかを彼女に見せれば冷酷な表情で破り捨てかねないと思って愛想笑いを浮かべる。
「なるほど、内緒にしたいのか。それなら別にかまわないが……西園寺!」
カウラの強い口調に廊下で様子を伺っていた要が顔を覗かせる。
「こちらは二人に任せるが貴様の明日の都心での買い物。私もついて行かせてもらうからな」
「なんでだよ。アタシも秘密にしておいて……」
そこまで言ったところで先ほどとはまるで違う厳しい表情のカウラがそこにいた。
「まあ数千円の買い物ならそれでもかまわないが貴様は……」
呆れたように要を見つめるカウラ。誠も昨日要が気に入らないと買うのをやめたティアラの値段が数百万だったことを思い出しニヤニヤ笑っている要に目を向けた。
「なんだよ、実用に足るものを買ってやろうとしただけだぜ。アタシの上官が貧相な宝飾品をつけてそれなりの舞台に立ったなんてことになったらアタシの面子が丸つぶれだ」
そう言うと立ち上がり、自分より一回り大柄なカウラを見上げる要。だがカウラもひるむところが無かった。
「身につけているもので人の価値が変わるという世界に貴様がいたのは知っている。だが、私にまでそんな価値観を押し付けられても迷惑なだけだ」
カウラの言葉がとげのように突き刺さったようで要は眼光鋭くカウラをにらみつけた。




