時は流れるままに 9
「そう言えば……今日は?」
突然アイシャが思い出したように言う様を、明らかに仕上げの作業で煮詰まっているサラがうんざりしたと言う目で見つめる。
「呆けたの?今日は12月4日!吉田さんのところに今シャムちゃんの描いている原稿を今日中に仕上げないとって言いつけて出かけたのはアイシャじゃないの!」
そう言うと赤い髪を掻きあげた後、机の上のドリンク剤に手を伸ばした。
「4日ねえ……」
「なんだよ言いたいことがあればはっきり言え」
要はアイシャの思わせぶりな態度に苛立っている。飽きれて詰め所に帰るタイミングを計っているようで落ち着かないカウラ。だが彼女達より圧倒的に階級が低い誠はただ黙って彼女達が次の行動を決めるのを待つしかなかった。
「この前の同盟厚生局のはねっかえりを潰した件で今回のコミケの準備は吉田さんが仕切ってくれることになってたし……」
「マジかよ。おい、サラ。最後の仕事だそうだぞ」
吉田がコンピュータ端末の画面から伸び上がり目をやった先には死にそうな表情のシャムが原稿を手に取っている様が見えた。
「わかったー……」
ドリンク剤の効果もないというように半開きの目が痛々しいサラがそれを受け取ってしばらく呆然と天井を見上げているのが見える。
「つまり私と誠ちゃんはフリーなのよ!」
「何を言い出すんだ?」
「病気だ。ほっとけ。詰め所に帰るぞ」
突然力強く叫ぶアイシャだが、シャム達の疲労が伝染したと言うような疲れた顔をして誠の隣に来て肩を叩く要。明らかに胡散臭そうなアイシャの言葉に無視を決め込もうとするカウラ。二人に連れられて誠は修羅場から立ち去ろうとした。
「ちょっと待ってよ!これはいい企画が……」
「私の誕生会でもやろうって言うのか?素直にクリスマス会がしたいって言え」
カウラの一言にまるで衝撃を受けたようによろめくアイシャ。いつものように芝居がかった動きでそのまま原稿の仕上げをしているサラの隣の机に突っ伏した。
「アイシャ。みんな呆れてるわよ」
そう言って目もくれずにもくもくと作業を続けるサラ。
「サラまで……」
「私もシャムちゃんの手伝いをしろって言ったのアイシャじゃないの」
明らかに不機嫌そうにそう言うとアイシャを無視する体制に入った。
「まあそうね」
サラが構ってくれないことで芝居をやめてアイシャは立ち上がった。
「じゃあシャムちゃん達を排除したクリスマス会の企画。これを考えてくる。ハイ!みんな。これ、宿題だから」
そう言うといつものように急な思い付きを誠達に押し付けて颯爽とアイシャは部屋を出て行った。




