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時は流れるままに 89

「あのなあ、アイシャ。クイズ大会に来たわけじゃないんだ」 

 それまで様子を見守っていた要の一言。誠はようやく救われた気持ちになった。

「やっぱり西園寺は何もなしか。まあその方が気楽だがな」 

 カウラはそう言うと淡々とメロンソーダをすする。

「おい、アイシャ。やっぱこいつに物やってもしょうがねえよ」 

「まあ落ち着いて」 

 アイシャがなだめて要が収まる。いつもの光景だが、要が買おうとしているものがものだけに誠も愛想笑いを浮かべた。

「でも誠は本当に迷惑かけていないんですか?どうも心配で……」 

 そう薫がつぶやいたとき、アイシャの右手に巻かれた携帯端末が着信音を響かせた。

「それは逆にうちの方が心配なくらいで……ちょっとごめんなさいね」 

 アイシャはそのまま端末を起動させる。まさにうれしそうと言う言葉を体現するために存在するような笑顔のリアナがその画面を占拠した。

「まあ、食事中なの?」 

 リアナは少し遠慮がちにコーヒーをすするアイシャに声をかける。

「いえいえ、もう終わりましたよ」 

 要の言葉に納得するようにうなづくリアナ。そして彼女は画面の下にロードされているデータを指差した。

「ごめんね、休みなんだけど。遼州同盟軍でちょっとトラブルがあって。今送ったデータの提出が同盟会議で問題になっているのよ。それをわざわざ東和海軍から資料の提出を求められちゃって……アイシャちゃん。お願いだから手伝ってくれる?」 

 今にもなきそうなリアナの一言にアイシャには残された選択肢は無かった。

「それって提出期限はいつなんですか?」 

「えーと明後日……明後日で良いみたいよ」 

 振り返ってリアナが確認した時点でアイシャは何かを悟ったように要を見つめる。

「お疲れさーん」 

 要の一言。アイシャはそれで立ち上がる。

「すいませんね、ちょっと近くのネットカフェで仕事してきます」 

「良いのか?セキュリティーは?」 

 はやす要をアイシャは渾身の笑みで迎えて見せた。

「私は一応幹部なの。それなりのセキュリティーのある店に行くわよ」 

 そう言うとそのままアイシャは伝票を持ってレジへと向かう。

「珍しくおごりか?」 

「まあね」 

 要の突っ込みに背中で答えながらアイシャは視界から消えた。

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