時は流れるままに 85
とりあえず中に入り、そのままエレベータに向かう。
「6階か」
誠の言葉に要とアイシャはその階の店の一覧に目をやる。その隙にエレベータのボタンを押して黙ってランプを見る誠。
「カルチャーフロアー?」
そう言ってしばらく頭をひねる要。しばらくその様子とそのフロアーに出展している店の名前を見比べていたアイシャだが、ひらめいたように満面の笑みで誠を見つめた。
「これは考えたわね」
アイシャの問いに黙ってうなづく誠。その二人の様子にしばらく呆然としていた要。
エレベータが止まる。地下の食料品売り場から流れてきた客が吐き出されるのと同時に三人は中に納まった。
「どう言う事だよ!二人だけなんだかわかったような顔しやがって」
不機嫌な要にアイシャは自分の買い物袋に書かれたキャラクターを指差した。しばらくその絵に目を向けた後不思議そうに要は首をかしげた。
「は?それはその店のキャラクターだろ?……すると何か?あいつにそのちびのコスプレでもさせるのか?」
要の言葉にあきらめたような大きなため息をつくアイシャ。その様子がさらに要をいらだたせているのがわかる。だが誠には迷いが無かった。
ささやかなメロディーが流れドアが開いた。誠は慣れた足取りでエレベータの前の書店を素通りする。その確固たる足取りに少しばかり驚いたような表情を浮かべる要。そしてアイシャもそんな要を興味深そうな視線で観察している。
文具店がある。その前でも誠は迷うことなく素通りを決める。さすがにこの時は要の表情は驚きを超えて不思議そうなものを見つけたシャムのそれと変わらなくなっていった。
「ここまで来てわからないの?」
アイシャの挑発の言葉。だが、要は素直にうなづいてしまう。
「あ!」
突然要が叫ぶ。そして手を打つ。その視線の前には画材屋があった。
「そうか、絵を描くのか……なるほど。それは考えたな、神前にしては」
少しばかり声が震えている。アイシャはニコニコ笑いながら早速アクリル絵具を物色し始めた誠を覗き込んだ。
「ずいぶん慣れた足取りだったけど……この店は?」
とりあえず店内をざっと見回す誠に声をかけたアイシャに微笑が浮かぶ。
「昔から良く来ていますから」
誠はそう言ってアクリル絵具が並ぶコーナーを見つけて緑色の絵具を一つ一つ手に取った。




