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時は流れるままに 79

「しかし混むなあ、高速じゃねえよ。これ低速」 

「そんな誰でも考え付くようなことを言って楽しいか?」 

 要の言葉に運転中のカウラが突っ込みを入れる。

 誠の実家は東都の東側、東都東区浅草寺界隈である。東都の西に広がる台地にある都市、豊川市にある保安隊の寮からでは東都の都心を横切るように進まなければならない。

 都心部に入ってからはほとんど車はつながった状態で、さらに高速道路の出口があと3キロというところにきて車の動きは完全に止まった。

「すいませんねえ、朝食の準備までしていただいたのに……ええ、たぶんあと一時間くらいかかりそうなんです」 

 携帯端末で母の薫とアイシャが話しているのをちらりと見ながら、助手席で誠は伸びをしながらじっと目の前のタンクローリーの内容物を見ていた。危険物積載の表示。少しばかり心配しながらじっとしている。

「シャム達は仕事か……こんなことなら出勤のほうが楽だわ」 

 要がそう言ってようやく話を終えて端末を閉じたアイシャをにらみつける。

「なによ」 

 アイシャに言われて口笛を吹いてごまかす要。

「シャムと言えば……今頃はクロームナイトの方のエンジンの試験が始まったころだな」 

 そんなカウラのつぶやきに顔をしかめるアイシャ。そして大きく一つため息をつくと緊張した面持ちでカウラに食って掛かる。

「駄目よ!カウラちゃん。私達はオフなの、休日なの、バカンスなの」 

「バカンス?馬鹿も休み休み言えよ……あれ?バカがかぶって面白いギャグが言えそう……えーと」 

「要ちゃんは黙って!」 

 駄洒落を考えていた要を怒鳴りつけるアイシャ。その気合の入り方にカウラも少しばかりおとなしくアイシャの言うことを聞くつもりのようにちらりと振り向く。

「要するに仕事の話はするな。そう言いたい訳だろ?」 

 なだめるようにカウラがそう言うと納得したようにうなづくアイシャ。

「そう、わかっているならちゃんと運転する!前!動いたわよ」 

 タンクローリーが動き出したのを見てのアイシャの一言。仕方なくカウラは車を動かす。

 周りを見ると都心部のオフィスビルは姿を消し、中小の町工場やマンションが立ち並ぶ街が見える。

「あとどんだけかかる?」 

 明らかに要がいらだっているのを見て誠は心配になってナビを見てみた。

「ああ、この先100メートルの事故が原因の渋滞ですから。そこを抜ければすぐですよ」 

 そんな誠の言葉通り、東都警察のパトカーのランプが回転しているのが目に入る。

「なるほどねえ、安全運転で行きましょうか」 

 窓に張り付いている要に大きくため息をつくと、カウラはそのまま事故車両と道路整理のためのパトロールカーの脇を抜け目の前に見える高速道路の出口に向けて車を進めた。

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