時は流れるままに 76
「今夜は明華達は徹夜だろうな。実験データの整理もしばらくかかりそうだし」
冬の早い夕暮れは過ぎて、定時の時報が鳴る。ランは明華から送られたデータとにらめっこをしながら難しい顔で部屋を見回した。
すでに冷やかしに来ていた第四小隊の面々は帰っていた。データ解析を依頼された吉田は電算室に篭りきり、シャムは亀吉を新たなテリトリーである宿直室に連れて行っているところだった。
「本当に良いんですか?」
カウラの心配そうな言葉。ムッとした表情でランがそれを見つめる。アイシャの策で休暇をとらされるということが今ひとつ納得できない表情のカウラ。
「オメー等がいなくても仕事は回るよ。ここ数日は技術部はカネミツのデータ収集で整備の連中の手が回らないだろうからな。司法局の実力行使活動も、今頼まれてもうちは動けねえよ。既存戦力の整備に回す人的余裕なんてねーからな」
投げやりな言葉に冷ややかな笑い。とても見た目の子供っぽさとは遠く離れたランの表情に誠も愛想笑いを浮かべる。
「みなさーんこれからはお休みですよ!」
突然ドアが開く。そしていつものように突然アイシャが叫ぶ。当然のようにそれをランがにらみつける。
「えーん、怖いよう。誠ちゃん。あそこのちっこい怪物が……」
そう言ってすばやく誠の腕にすがりつくアイシャ。
「永遠にやってろ!バーカ」
アイシャが誠にまとわりつく様子を迷惑そうな表情で見つめるラン。彼女もアイシャのこういうノリには慣れてきたので無視して仕事に集中する。
「クバルカ中佐。私達の仕事は……」
そんな気を使ったカウラの言葉に画面を見つめながら手を振って帰れというようなそぶりを見せるラン。
「ほら!実働部隊隊長殿のありがたい帰還命令よ。カウラお願い」
車の主のカウラを見つめるアイシャ。仕方がないというように端末を終了して立ち上がる。何度かランを見てみるカウラだが、ランの視線は検索している資料から離れることはない。
「早く帰れ!すぐ帰れ!」
そんなランの言葉に追い立てられるようにして誠達は詰め所を後にした。年末が近く、データを手にした管理部の隊員があちこち走り回っている。
「なんか凄く居場所が無い感じなんだけど」
忙しそうな隊員達を見て要は頭を掻いた。さすがに彼等がほとんど誠達に目もやらないことに気がついてため息をついたカウラはそのまま廊下を更衣室へと歩き出した。




