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時は流れるままに 74

『おーい、明華。どこまで出力上げればいいの?』 

 画像の中、嵯峨は余裕で鼻歌交じりである。スロットルインジケーターは順調に上がる。すでに出力は10パーセントを超えていた。

「この時点で05式と互角……化け物だな、こりゃ」 

 要は首筋にコードを差し込んで試験状態をチェックしながらニヤついている。誠も目の前の黒い機体が化け物と呼ばれる由来がよくわかってきた。

「とりあえずノーマルのシステムで対応可能なラインまで回してみてください。そこでデータを取った後で本稼動の試験を行うかどうかの判断をしますから」 

 明華の言葉に余裕でうなづく嵯峨。

「よくまああれほど余裕な表情ができるねー」 

 呆れたというようにランがつぶやく。そして急にエンジン音が途切れた。

「駆動炉を干渉空間に移行したか……」 

 場違いなほどに緊張した言葉に、誠が振り向けばつなぎを着たままのロナルドが親指のつめを口でかみながら画面を見つめていた。

「あんな芸当ができる法術師は他にいないんじゃねーかな」 

 そんなランの言葉にロナルドは大きくうなづく。エンジンの音が途切れて沈黙が支配するハンガー。固定器具の冷却液の吹き上げる音、ハンガーを渡る強い北風の風鳴り、そのような音が響いてまるで何も起きていないかのような錯覚にとらわれる。

『実に静かだねえ……こりゃあ環境にやさしいや』 

 笑う嵯峨。だが、真剣な表情で彼の様子と調査データ見比べている明華にそんな言葉は届くものではなかった。

「ヨハン!データは?」 

『ばっちり取れてますよ……ってこれは干渉空間がでかい!これだけのエネルギー退避領域があれば予定の倍ぐらいまで標準システムで回りそうですけど』 

 ヨハンの声に明華は複雑な表情で腕を抱えて考え込む。

『明華。エンジン回すのは良いけど俺の負担も考えてくれよな』 

 言葉の意味を逆用したように笑っている嵯峨。だが、しばらく考えた後明華は決断した。

「とりあえず30パーセントまで上昇後、そのままエンジンのエネルギーを正常空間内に誘導。停止ミッションに移行する」 

「だろうな。あせって見る必要もねーだろ」 

 明華の判断にランも同意するようにうなづいた。

「なんだよ……中途半端というか……煮え切らないと言うか……」 

 そんなことをつぶやく要をにらみつけるラン。

「わかってるよ。干渉領域に逃げてるエネルギーがエンジンに逆流してきたらドカンと行くって話だろ?確かに急いで稼動状態に持っていく必要も無いわけだし……」 

 合格点の言い訳と捉えたのか、ランはそのまま視線を明華に向けた。

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