時は流れるままに 71
そんなランを置いてカウラは自分の席に着いた。誠もさすがにいつまでも手の届かない幹部の人事の話に付き合うつもりは無いので自分の席に着く。要は興味深げにランの端末の画面を見つめながら小声でランと話をしていた。
「そう言えばどうするの?クリスマス」
仕事に片がついたのか、シャムが亀吉の葉っぱを取り上げてかじりながらカウラを見ていた。
「仕事中だぞ、後にしろ」
そうは言っては見たものの、カウラに急ぎの仕事が無いのは誠も知っていた。むしろ『クロームナイト』を受領するためにいろいろな手続きが必要になるシャムの仕事のほうが心配だった。
「ああ、アイシャが任せろって言ってたな。それとこいつのお袋が……」
そう言って要が誠の隣まで来ると誠の髪の毛を左手でぐしゃぐしゃにする。
「止めてくださいよ、まったく」
誠は何とか手ぐしでもとの髪型に戻す。その時、部屋の扉が開いた。
「凄いな、あれ。どうするんだ?あんな物騒なもの運んできて」
スタジアムジャンパーを着たジョージ岡部中尉が両手に手提げ袋を提げて現れる。続くのはダウンジャケットを着たフェデロ・マルケス中尉。どちらも機嫌はけっして良いようには見えなかった。
「なんだ、お前等。休んでれば良いのによー」
「つれないこと言わないでくださいよ、中佐。あ!これお土産」
岡部はそう言うと手にした袋をそれぞれに配る。誠も中を覗いてみる。
「シュウマイですか?」
「まあな、俺生まれも育ちも横浜だから」
そう言って笑う岡部に続き、フェデロも土産を配った。
奇妙な形の木の置物。誠はしばらく見つめてそれが人間の顔をディフォルメしたものだと気づいた。カウラも要も不思議そうに手にした像を見つめている。
「あのー……」
「ああ、俺は生まれも育ちもサンフランシスコだから」
「だとなんでそうなるんだ?」
要の突っ込みにカラカラと笑うフェデロ。
「冗談はやめとけよ。それにオメーはフロリダ出身じゃなかったか?」
像を手にとってにらんでいるラン。そして部屋にさらに客が訪れたようにドアが開く。
「どうしたんだ?貴様等は俺に付き合うことは無いだろ?ゆっくり休んでいれば良いんだよ」
油にまみれた白いつなぎのロナルド。重苦しい空気が部屋を包む。誠もカウラも要もただ彼が静かに自分の席に座るのをじっと待っているだけだった。
「ああ、そう言えば俺は土産がなかったな……失敗したなあ」
そう言って笑うロナルド。だが、その表情を見て顔を引きつらせる岡部とフェデロはロナルドの隣の席に座るのを譲り合うようにしながら引きつった笑みを浮かべるだけだった。




