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時は流れるままに 70

「ちょっとついてきてくれ」 

 カウラは実働部隊の部屋の前で要と誠に声をかけた。いつもなら反応するアイシャだが、額に濡れタオルを当てたままぼんやりした表情で廊下を更衣室へと歩いていく。

「おう、来たか」 

 隊長の机にはちょこんとランが座っている。昨日、ビールの量ならばかなり飲んでいたはずだというのに平気の体で端末の画面を覗き込んでいた。

「ハンガーのあれのことだろ?言わねーでもわかるよ」 

 そう言いながら苦笑いを浮かべるラン。その隣の机では必死に端末の画面の文字を追っているシャム。そしてその隣のケージには巨大な亀がおいしそうに野菜を食べていた。

「あんな化け物なんでうちで預かるかってことだろ?予算に関しちゃあれはまるで鯨だぜ。高梨もこれから予算編成をどうするかで発狂寸前だ」 

 先手を打ってそう言って笑うラン。

「それならなんで……やはり押し付けられたんですか?」 

 カウラの一言にランは誠を見つめた。なぜ自分に視線が飛んだかわからない誠。それを見て大きくため息をつくラン。

「まあ同盟厚生局の事件が直接のきっかけだな。厚生局とつるんでクーデターを画策していたシンパが芋づる的に見つかってな。特に東和軍はひどい有様だ。表には出ていないが内部調査で士官の10パーセントが何らかのつながりがあるという結果が出た。来年までにその全員が諭旨退職処分になる予定だ」 

 自分が動いた結果で起きた大変な事態。誠はそれに打ちのめされたように顔を青く染めていく。そんな誠の肩を要が叩いた。

「そりゃあ人件費が浮いていいことなんじゃないのか?」 

 そのままランの机の端に腰掛けてにんまり笑う要。ランは大きくため息をついて要を見上げた後、そのまま話を続けた。

「同盟加盟国では東和の二の舞を避けようと内部調査を実施したんだ。遼南の反地球運動とつながっている連中、胡州のはねっかえり、西モスレムの原理主義者、ゲルパルトのネオナチ。どれもまあよく見つかること……」 

 あきれたような調子で画面を切り替えたラン。そこには次々と各国の軍幹部の経歴書が映し出されては消える。

「つまりそいつ等に持たせとくと使っちゃいそうだからうちで引き受けたわけか……迷惑な話だな」 

 要の言葉にカウラもうなづいてみせる。ランもまた複雑な表情で誠達の顔を見渡した。

「まったく迷惑な話だぜ。アタシ機体はできればどこぞの海にでも沈めたいのが本音だが……えらいさんは許さないだろうからなー」 

 そう言ってランは大きく伸びをした。

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