時は流れるままに 65
「今の女性が君の母親か?若いな」
エルマの言葉に要がうなづいている。ランは渋い顔をして誠を見つめているが、それはいつものことなので誠も気にすることもなかった。
「アタシもそう思ったんだよ。まるで姉貴でも通用するだろ?なにか?法術適正とかは……」
「母からは聞いていませんよ。そんなこと。それにそういう言葉はもう数万回聴きました」
夏のコミケでいやになるほど要に話題にされた話を思い出してそう言って誠はビールをあおる。空になったジョッキ。ランの方を見れば彼女も飲み終えたジョッキを手に誠をにらみつけている。
「じゃあ、ちょっと頼んできますね。クバルカ中佐は中生で、要さんは良いとして」
「引っかかる言い方だな」
要はそう言いながらジンのボトルに手を伸ばす。
「じゃあ、誠ちゃん私も生中!サラとパーラの分も。それと……」
アイシャが仲良くエダとミックス玉をつついているキムを眺めた。
「僕は良いですよ。焼酎がありますから」
アイシャの視線を浴びて仕方がないようにボトルをかざして見せるキム。カウラの烏龍茶のグラスが空になっているのにもすぐに気がついた。立ち上がる誠。
「私はサワーが良いな。できればレモンで」
エルマの言葉を聴いて誠は立ち上がった。そのまま階段を降りかけて少し躊躇する。
「まあ、神前君。注文?」
時間を察したのか春子が上がってこようとしていた。そして階下には皿を洗う音だけが響いている。
「ロナルドさん達は?」
誠の言葉に春子はそのまま一階に戻る。誠が降りてくるとすでにロナルド達の居たテーブルはきれいに片付けられていた。
「ええ、島田さんが部隊から呼び出しがかかったということでみんなついていかれましたわ」
そういいながら伝票を取りに走る春子。皿を洗っていた小夏がひょこりと顔を出す。そんな娘を見て安心した笑みを春子が浮かべた。
「神前君、クバルカ中佐、サラちゃんとパーラちゃん、それにクラウゼ少佐が生中。それにベルガー大尉が烏龍茶……でいいかしら?」
いつものことながら注文を当ててみせる春子。
「それとお客さんがサワーが良いって言う話しなんですが……」
誠の言葉に晴れやかな表情を浮かべる春子。
「それならカボスのサワーが入ったのよ。嵯峨さんがどうしてもって置いていくから保安隊の隊員さんだけが相手の特別メニューよ」
いつものように嵯峨の話をする時は晴れやかな表情になる春子。それを見ながら誠は笑顔を向ける。
「じゃあ、お願いしますね」
そういうと誠は二階への階段を駆け上がった。そこには沈痛な表情のカウラ。ニヤニヤ笑うアイシャと要。他人のふりのサラとパーラ、そしてキムが待ち構えていた。




