時は流れるままに 62
「でも……私達には何も出来ないわよね。この子の人権がどうだとか言うのは筋違いだし、うちの周りをこの子が歩いていたって要みたいに無理にしょっ引くわけにも行かないんだから」
アイシャもそう言うと置き去りにされていた豚玉をかき混ぜ始める。
「確かにそうだが、今後、場合によっては連携をとって対処する可能性もある。先日の同盟厚生局と東和軍部の法術研究のが発覚した直後だ。可能性は常に考慮に入れておくべきだろう」
エルマの言葉にあいまいに頷くアイシャ。カウラもようやく納得したように皿に乗せてあった烏賊玉に手を付ける。
「でも安心したな。貴様がこんなになじんでいるとは……本当に」
手にしたミックス玉の入ったボールをアイシャの真似をしながらかき混ぜるエルマ。その言葉に要は眉をひそめた。
「なじんでる?こいつが?全然駄目!なじむと言う言葉に対する冒涜だよそりゃ」
要はそのまま手にしたジンのグラスを傾ける。カウラは厳しい表情で要をにらんでいる。
「ほら、見てみろよ。ちょっと突いたくらいでカッとなる。駄目だね。修行が足りない証拠だよ」
「そうねえ。その点では私も要ちゃんに同意見だわ」
手を伸ばしたビールのジョッキをサラに取り上げられてふてくされていたアイシャが振り向く。その言葉に賛同するように彼女から奪ったビールを飲みながらサラが頷き、それを見てパーラも賛同するような顔をする。
「そうかなまだやはり慣れているとは言えないか……」
静かにつぶやくカウラ。その肩を勢い良くアイシャが叩いた。
「その為の誕生日会よ!期待しててよね!」
アイシャはそこで後悔の念を顔ににじませる。誠はすぐに要に目をやった。にんまりと笑い。烏賊ゲソをくわえながらアイシャを見つめている。
「ほう期待できるわけだ。どうなるのか楽しみだな」
「なるほど。分かった。期待しておこう」
納得したように烏龍茶を飲むカウラ。そこでアイシャの顔が泣きべそに変わる。
「良いもんね!じゃあ誠ちゃんのお母さんに電話して仕切っちゃうんだから!」
そう言うとアイシャは腕の端末を通信に切り替える。だが、彼女の言った言葉を聞き逃すほど要もカウラもお人よしではなかった。
「おい、アイシャ。こいつの実家の番号知ってるのか?」
要の目じりが引きつっている。隣でカウラは呆然と音声のみの通信を送っているアイシャを眺めている。
「実家の番号じゃないわよ。薫さんの携帯端末の番号」
その言葉で夏のコミケの前線基地として誠の実家の剣道場に寝泊りした際に仕切りと母の薫と話をしていたアイシャのことを思い出して呆然とした。




