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時は流れるままに 61

 頭を掻く誠。カウラもランの視線から目を背ける。

「実際近くの子供だと思ってたから……ねえ」 

 アイシャはそう言うと後ろで彼女を盾にしてランから隠れていたサラとパーラに目を向ける。

「あの……」 

「わかった。つまりオメー等は何も知らないと」 

 そう言って端末の幼帝時代の嵯峨をまじまじと見るラン。明らかにその異常な食いつきに気づいたのは要だった。

「なんだ?中佐殿は枯れ専だと思っていたのですが叔父貴が好きだとか?あれが小さかったらとか考えている……とか?」 

「何が言いてえんだ?あ?」 

 凄まれてすぐに引っ込む要。隊の笑い話にランが隊長の嵯峨に気があると言う冗談が囁かれているが、それが事実だったのかと思うと誠は少し引いた。

「大使館の車で動いているってことは……アタシ等は監視されていたってことか。目的はこいつだろうがな」 

 ランは視線を誠に向ける。ただ愛想笑いを浮かべる誠。

「確かに君に関するデータはどの国も欲しがっているのは事実だ。近藤事件での衆人環視下での法術展開。あれに食いつかない軍や警察関係者はいなかっただろう」 

 そう言いながら感心するように見つめてくるエルマ。それが気に入らないアイシャが誠の腹にボディーブローを決める。

「隊長のクローンの製造が行われたということだとすると……アメリカ陸軍の関係者と言うことか」 

 カウラの言葉にエルマも頷く。嵯峨は先の大戦でアメリカ軍の捕虜としてネバダ州の実験施設に送られていたことは隊では口外できない秘密の一つだった。誠達も生きたまま解剖され標本にされた嵯峨が再生して研究者を惨殺する映像を見たことがあった。

「……っておい。他にも乗っている人物がいるじゃねえか」 

 エルマに話せない事実を回想していた誠達にランが声をかけた。すぐに手元の端末の画像を拡大する。

 ランの言葉通り後部座席に後頭部が見える。そのまま拡大するとそれが長髪の女性のものであることがわかる。

「同行した研究員か何かか?」 

 要はエルマにたずねた。

「それは断定できないな。この状況の報告をしてきた者の話ではこの少年よりも少し年上の少女だったと聞いている」 

 エルマの言葉をさえぎったランがまじまじと画面を見つめていた。

「そうとも言えねーよな。うちの明華だって16歳で遼北の人民軍技術大学出て技術畑を歩いてきたって例もあるわけだしな。思ったより天才と言うのは多くいるもんだぜ」 

 ランはそう言うと自分の中で納得したというようにもとの上座に戻ってしまう。

「つまりオメエ等は餓鬼に遊んでもらってたわけだ……同レベルで」 

 同じく自分の鉄板の前に腰を下ろした要。タレ目が誠達を哀れむように視線を送ってくるのがわかる。誠はただ頭を掻くだけだった。

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