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時は流れるままに 59

「少佐!止めてください少佐!」 

 キムの叫びが響く。割り箸でキムの頭をむやみに突きまわすアイシャ。それを苦笑いを浮かべながらエルマは眺めていた。

「楽しそうな部隊だな。ここは」 

 半分以上は呆れていると言う顔の彼女に合わせて無理のある笑みを浮かべるカウラ。

「あんた、何か言いたいことがあってこいつに声をかけたんじゃねえのか?」 

 タコの酢の物に手を伸ばした要の言葉にエルマは表情を切り替える。

「ああ、そうだ。今夜は例のカネミツが搬入されるらしいな」 

「どこでその情報を?」 

 カウラの問いにエルマは首を振る。

「機動隊の方と言うことは警備任務があったんじゃないですか?」 

 誠が適当に言った言葉に頷き、そのまま腕の端末に手を回す。

「神前曹長はなかなか鋭いな。私は新港でのカネミツの荷揚げ作業の警備担当だった」 

「だけどそれだけで私に声をかけたわけじゃないんだろ?」 

 カウラの言葉を聞きながら端末の上に浮かぶ画面を検索しているエルマ。

「何も無ければ……確かにな。貴様のことなど忘れていたかもしれない」 

 そう言って笑みを浮かべるエルマが端末の上に画像を表示させた。

 闇の中に浮かぶ高級乗用車。見たところ東和では珍しいアメリカ製の黒塗りの電気自動車である。そこには少年が一人、窓の外に顔を出した運転手のサングラスの男の顔も見える。

「外ナンバーか……新港。監視している連中がいたところで不思議は無いな」 

 カウラはそう言って自分の端末にその写真をコピーした。それをわざわざ立ち上がって覗き込む要。しかし、それを見た要の表情が急に変わった。

「おい、叔父貴じゃねえの?この餓鬼。いつの間にか小さくなっちゃって……誰かみたいに」 

 誠もカウラもしばらくは要の言葉の意味が分からずに呆然としていた。

「おい、あたしにも送れ!」 

 上座で一人仲間はずれにされていたランが叫ぶ。要はしばらく呆れたように頭を掻くと自分の端末を起動させて、すぐに画像データを検索しその画像を三人の腕の端末に転送した。

 そこにはまるで中国の古代王朝の幼帝といった雰囲気の少年が映っていた。明らかに先ほどの少年と比べるとひ弱でか細い印象があるが、同一人物と思いたくなるぐらいに似通っていた。

「これは?誰だ」 

 カウラの一言に呆れたようにため息をついた要。そして彼女はそのまま自分の座っていた席の前に置かれていたグラスを手にとって口に酒を含む。

「遼南の霊帝……ムジャンタ・ラスコー陛下。つまり叔父貴本人だ」 

 要の言葉にカウラと誠はしばらく思考が停止した状態になっていた。

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