表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/188

時は流れるままに 57

「私に気を使う必要は無いぞ」 

 呼ばれたからと言うことで誠を気遣うエルマの言葉だが、さすがにカウラ達は下の階の葬式のような雰囲気に付き合うつもりは無かった。

「気にするなって。個人的なことに顔を突っ込むほど野暮じゃねえから」 

 鬱陶しい空気を纏ったロナルドの雰囲気がうつっていた誠の肩をバシバシと叩く要。

「そうか?」 

 要の言葉にランは小さな彼女が持つと大きく見える中ジョッキでビールを飲んでいた。それを心配そうに見つめているエルマ。

「ああ、大丈夫ですよ。クバルカ中佐は二十歳過ぎていますから」 

 なだめるように言った誠をランがにらみつける。

「悪かったな。なりが餓鬼にしか見えなくて」 

 ギロリと誠をにらむラン。確かにその落ち着いた表情を見ると彼女が小学一年生ではなく、司法執行機関の部隊長であることを思い知らされる。誠の額に脂汗がにじんだ。

「そんなこと無いですよ!」 

 ふてくされるラン。その様子をいかにもうれしそうに見つめているアイシャ。彼女にとって小さい身体で隊員たちを恫喝して見せる様子は萌えのポイントになっていると誠も聞いていた。このままでは間違いなくアイシャはランに抱きついて頬ずりをはじめるのが目に見えていた。

「それより、もしかしてエルマさんの誕生日も12月24日なんですか?」 

 焦って口に出した言葉に後悔する誠。予想通りエルマは不思議な生き物でも見るような視線をまことに向けてくる。

「誕生日?」 

「どうやら起動した日のことを指すらしいぞ。まあ、エルマの起動は私よりも二週間以上遅かったな」 

 カウラの言葉で意味を理解したエルマがビールに手を伸ばす。

「そうだな。私は一月四日に起動したと記録にはある。最終ロットの中では遅い方では無いんだがな」 

 エルマの言葉を聞きながら誠は彼女の胸を見ていた。確かにカウラと同じようにつるぺったんであることが同じ生産ラインで製造された人造人間であるということを証明しているように見えた。

「あれ?誠ちゃん……」 

 誠の胸の鼓動が早くなる。声の主、アイシャがにんまりと笑い誠の目の動きを理解したとでも言うようににじり寄ってくる。

「レディーの胸をまじまじと見るなんて……本当に下品なんだから」 

「見てないです!」 

 叫んでみる誠だが、アイシャだけでなく要やサラまでニヤニヤと笑いながら誠に目を向けてくる。

「こいつも男だから仕方がねえだろ?」 

「そうよねえ。でもそんなに露骨に見てると嫌われるわよ。ねえ、カウラちゃん」 

「ああ……」 

 突然サラに話題を振られて動揺しながら烏龍茶を飲むカウラ。それぞれの鉄板の上ではお好み焼きの焼ける音が響き始めていた。

「早く!誠ちゃんの烏賊玉、出来てるわよ」 

「え?アイシャさん焼いちゃったんですか?」 

 誠は驚いて自分の空になった材料の入ったボールを見た。その前の鉄板には自分のミックス玉を焼きながら誠の烏賊玉にソースを塗っているアイシャがいる。

「もしかして迷惑だった?」 

 落ち込んだように見上げてくるアイシャ。それがいつもの罠だとわかっていてもただ愛想笑いを浮かべるしかない誠。

「別にそう言うわけでは……」 

 そう答えるしかない誠。アイシャの表情はすぐに緩んだ。そしてそのままこてで誠の烏賊玉を切り分け始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ