時は流れるままに 56
誘われるままに誠は階下に下りた。そこには島田とキム、菰田に囲まれて赤い顔をして酒を飲み下しているロナルドの姿があった。その目だけ死んでいる上官の姿にすぐに誠は後悔の念に囚われていた。
「よう!」
島田が手を上げる。その複雑そうな笑みに弱ったように誠は軽くそれに答えながら近くの空いた椅子を運んで彼らの隣に腰掛ける。
「やっぱりノーマルがいいですよね。エンジンは下手にいじると……」
誠はそう言ってカラカラと笑うがさらに場の雰囲気は冷たくなった。
「それが……」
島田が口を開く。ロナルドはその表情を見ながら皮肉めいた笑みを浮かべた。
「なかなか調整がうまく行かなくてね。しばらく時間はかかりそうなんだ」
焼酎入りの炭酸を飲み終えた菰田の言葉。さらに場は落ち込んでいく。島田の頬が引きつっている。ロナルドは目の前のウィスキーのグラスを傾けている。
「でも調整とかはうちの機材で……」
「さすがの俺も無理だわ。しばらくは搬入した新型の調整で動けなくなる」
島田の言葉がさらに落ち込んだ空気に止めを刺す。キムは笑ったままロナルドを見つめている。ぼんやりとした表情でホルモンを転がすロナルド。
「でも……」
「ああ、お前さんにはわからんか。じゃあ上に行ってこい」
島田の一言。もうたまらなくなって立ち上がる誠。
「すまないな。俺の個人的な問題だと言うのに」
ロナルドは強がった笑みを浮かべる。階段の上の階から何度と無く誠を呼ぶのは要とカウラ。二人ともとりあえずいじる対象として誠を呼んだだけあって少し緊張したような調子の声が響いている。
「申し訳ないですね」
そう言うと座っていた椅子を元の位置に戻す誠。
「君の気にすることじゃない」
強がるようにロナルドが吐いた言葉になんとなく勇気をもらえた誠はそのまま彼らを置いて二階へと上がった。
「大丈夫なのかよ……」
弱ったように誠に囁く要。カウラも大きなため息をつく。
「大丈夫には見えないだろうが。それより島田はこんなことをしていて良いのか?」
「明華の姐御が気を使ったんだろうな。大変だな島田の奴も。たぶんこのままとんぼ返りで隊に戻ってカネミツの整備手順の申し渡しとかをやるんだろうから……つらいねえ」
そう言うと要は階下の男達を見捨てるように座敷の自分の鉄板に向かった。




